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プレスリリース・活動報告

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「経済財政運営と改革の基本方針2018」について

 6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針2018)」について、日本歯科医師会は、従来の記載から更に「国民皆保険を維持、次世代に継承し、国民の暮らしにおける安心と安全を確保する」として、国としての意思が明確に示されたことを評価する。また昨年の骨太の方針に記載された歯科健診、歯科保健医療の充実に加えて、国民全体への口腔機能管理の推進、歯科口腔保健の充実、地域における医科歯科連携の構築等、日本歯科医師会の目指す方向性が国と共有できている部分を高く評価する。

 一方、都道府県別診療報酬、受診時定額負担等の検討課題については、国民の社会保障制度への安心と信頼を損なうことのない対応を求めていきたい。負担能力のある患者に応分の負担を求めることは必要であるが、負担能力の判断は慎重な議論を望みたい。また苦渋の決断として決定している消費税率引上げについては、得られる社会保障の充実の為の財源に関して、医療を後回しにすることなく、社会保障全体の持続可能性の確保に向けられることを求めたい。

 歯科界は10年以上に亘り、歯科医療、口腔健康管理が全身の健康に大きく資することを様々なエビデンスを示して発信し、その充実により国民の健康寿命の延伸に寄与し、それを通じて医療の財政面にも貢献することを目指している。既に昨年の骨太の方針の内容も踏まえ、歯科健診の推進やオーラルフレイル対策等の取り組みを加速しているところであり、今後とも歯科界全体でその取り組みを強力に推進したい。

 日本歯科医師会はこの他、骨太の方針2018について、以下のように考える。

経済・財政一体改革と消費税率引上げについて

 5年半のアベノミクスの取り組みによる経済の好転の兆しが継続していることを評価する。一方、過度な医療費抑制政策により、国家の基幹である医療提供体制に破綻が生じないよう、確認と配慮を頂きたい。

 一世紀に及ぶ歴史を有し、先人の献身的努力により世界に冠たる制度に発展し、我が国を実質的に世界一の長寿国に導いた公的医療保険制度が、財政面での危機に直面している。歯科界も長年に亘り議論を重ね、長寿社会においては単に長く生きることだけを目標にするのではなく、食べる、話す、笑うという生活の基本を人生の最後まで全うするという、健康寿命の延伸を図ることで医療の財政側面に貢献することを目指してきた。

 公的医療保険制度の基本理念は、社会が一体となって患者を支えることであり、国民の全てが、医療保険制度、介護保険制度に安心感をもてることが、消費の活性化につながり、経済の活性化を支えるものと考える。

 経済・財政計画の基軸とも言える消費税率引上げについては、確実かつ適切に実施すると共に、得られる社会保障の充実の為の財源についても、医療を後回しにすることがないよう重ねて要望したい。

働き方改革、人づくり革命の実現と拡大に関連して

 歯科界においては歯科衛生士、歯科技工士の人材確保が慢性的な問題となっている。歯科医療、口腔健康管理の重要性が広く理解されている現状にあって、歯科医療職種の人材育成及び安定確保に向けて、歯科関連職種に関する職業告知、養成機関への補助金、学生への奨学金の充実、歯科衛生士、歯科技工士の登録制度の構築等、一億総活躍社会実現の一環として取り組んで頂きたい。

 歯科分野におけるキャリアパスが不十分であることや、女性歯科医師の復職支援の充実も日本歯科医師会で取り組んでいる重要課題であり、国と協力の下での推進を図りたい。

生産性革命の実現と拡大に関連して

 口腔と全身の健康の関係については広く知られているところであるが、更にビッグデータの活用の中で、歯科、口腔からのアプローチにより、健康寿命の延伸、医療の財政側面への貢献が進むことを期待する。

 アジア健康構想も視野に入れつつ、歯科分野における国際協力、連携、人的交流、技術交流等について更に議論を深めていく。特にアジア諸国との連携協力のあり方を検討すると共に、8020運動の理念のアジアへの展開等も検討したい。

防災・減災と国土強靭化の推進に関連して

 大規模災害時における、避難所での口腔健康管理等歯科保健活動が震災関連死の防止に重要であることは明らかであり、災害派遣医療チーム等での歯科としての役割を果たしていきたい。また身元確認についても、日本歯科医師会として歯科情報の標準化等様々な取り組みを更に推進していく。そのためには、災害の規模や状況に拘らず、全国どこでも迅速かつ的確な歯科保健活動及び身元確認作業を実施するための基盤整備として、国と地方自治体の連携による共通教材を用いての人材育成及び資器材の配備を求めたい。

予防・健康づくりの推進に関連して

 歯科界を中心とした10年以上に亘る発信により、歯科医療、口腔健康管理の充実が全身の健康に大きく資することは広く知られている。

 今回の骨太の方針に「口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科健診の充実、入院患者や要介護者をはじめとする国民に対する口腔機能管理の推進など歯科口腔保健の充実や、地域における医科歯科連携の構築など歯科保健医療の充実に取り組む」と明記され、全ての国民への口腔機能管理の必要性が示されると共に、フレイル対策を含む介護予防に、地域の医科歯科連携等を通じて歯科からのアプローチが示されたことは、日本歯科医師会の目指す方向性が国と共有できていることであり、高く評価するとともに、歯科界一丸となって国民の健康増進に向けて貢献して参りたい。