2018年07月31日
加藤厚生労働大臣(右)に要望書を手渡す堀会長(30日)
日本歯科医師会の堀憲郎会長と佐藤保、牧野利彦両副会長は7月30日(月)、厚生労働省を訪ね、適切な歯科医療提供体制を構築し、国民の健康増進及び健康寿命の延伸を図るため、平成31年度制度・予算に関する要望書を加藤勝信・厚生労働大臣に手渡し、重点版(資料1)により説明しました。
要望では、次の7項目を重点的に求めた他、平成30年7月豪雨災害に係る被災歯科医療機関等への支援を要請しました。
① 医科歯科連携及び多職種連携の推進と歯科医療提供体制の充実
② 歯科口腔保健・医療の充実のための歯科行政の機能強化
③ 歯科衛生士及び歯科技工士の人材確保及び養成の支援
④ 生涯に亘る健診事業の充実
⑤ 介護予防とフレイル対策における「口腔機能の向上」の推進
⑥ 歯科医師の資質向上に資する研修体制の充実及びキャリアパスの整備
⑦ 災害医療及び防災計画等における歯科分野の充実
説明で堀会長は、8月1日より省令室となる「歯科口腔保健推進室」の活動に期待を示した後、平成30年7月豪雨で特に被害が大きかった岡山、広島、愛媛の3県の被災地視察結果を報告。岡山でのJMAT参加も含め、当初から避難所の対応が適切に行われていることを現地で確認するとともに、今後も県内のマンパワーで対応できるとの現地の方針を聞き、全国の都道府県歯科医師会の出動待機体制を一旦解除したことなどを伝えました。その一方で、被災した医療機関のほとんどは1階全体が水没しており、検査機器等が冠水して回復できない状況のため、「医療機関の復旧が地域の被災者の健康管理には不可欠」として、日本歯科医師会としても復旧支援に全力を挙げるとした上で、厚生労働省においても特段の配慮を求めました。
続いて、佐藤、牧野両副会長が重点7項目の詳細を説明しました。
①については、病院歯科の設置や、社会保障審議会介護保険部会、がん対策推進協議会への歯科医師の参画を要望しました。
②については、「歯科口腔保健推進室」が司令塔としての役割を果たすために必要な部署への歯科技官の配置を求めました。
③については、質の高い歯科衛生士や歯科技工士の確保に向けた養成校への支援策に加え、歯科衛生士の人材バンクなどの構築を視野に入れた検討会の設置を要請しました。
④については、「歯科健康診査推進等事業」の効果的な展開としてエビデンスの収集を求めました。
⑤については、「オーラルフレイル」の概念のさらなる明確化とともに、「口腔機能低下症」に関する診断、治療、管理のさらなる体系化を要望しました。
⑥については、歯科口腔保健医療へのニーズの変化に伴う研修体制の充実とともに、女性歯科医師の復職支援などの予算措置を要求しました。
⑦については、災害関連死の減少に向けた「災害医療チーム要請支援事業(歯科分野)」拡充のための予算措置や、全都道府県の地域防災計画等における災害医療コーディネーターとしての歯科医師の参画を訴えました。
林文部科学大臣(左)に要望書を手渡す堀会長(19日)
加えて、佐藤副会長が「口腔健康管理」の概念を説明。堀会長も「口腔ケアの表現を整理したい」として、歯科医師、歯科衛生士が専門的に行う口腔機能管理も俗に口腔ケアと呼ばれ、看護師が行う口腔清拭も俗に口腔ケアと呼ばれて曖昧になっていることを指摘。その上で、日本歯科医学会とも協議し、これまでの口腔ケア全体を「口腔健康管理」と呼び、歯科職種の関与の高いものから「口腔機能管理」「口腔衛生管理」「口腔ケア」と分けて使っていく方針を示し理解を求めました。
これを受けて加藤厚生労働大臣は個別要望項目への基本的な考え方を示すとともに、歯科から児童虐待防止への積極的な取り組みを要請しました。
また、19日(木)には堀会長、柳川忠廣副会長、瀬古口精良常務理事が文部科学省を訪ねて、「歯学教育の充実」「歯科医療職種の養成」を柱とする要望書を林芳正・文部科学大臣に手渡し説明を行いました。(資料2)
鈴木スポーツ庁長官(左)に要望書を手渡す柳川副会長(27日)
さらに、27日(金)には柳川副会長と小林慶太常務理事がスポーツ庁を訪問し、鈴木大地・スポーツ庁長官に東京オリンピック・パラリンピックにおける選手等への歯科治療や口腔健康管理およびスポーツマウスガードの提供などを円滑に実施するための予算措置を求める要望書を提出しました。(資料3)
1:平成31年度制度・予算に関する重点要望項目(厚生労働省関係)