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プレスリリース・活動報告

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認知症に係る支援体制構築へ研修事業推進
~改訂・新オレンジプラン~

 厚生労働省は、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」に基づき、「歯科医師認知症対応力向上研修事業」を展開しており、日本歯科医師会も積極的に協力している。

 研修事業は平成28年度より開始し、平成29年7月5日に改訂された新オレンジプランにおいて、平成32年度末までの受講者数として、歯科診療所の約4分の1以上の歯科医師数にあたる2.2万人を目標に設定している(平成28年度末現在で0.4万人)。

 研修事業の目的は、地域の医療機関、認知症疾患医療センター、地域包括支援センター等と日常的に連携する歯科医療機関の歯科医師等が、認知症の早期発見やかかりつけ医との連携対応、認知症の人の状況に応じた歯科治療・口腔機能の管理等を適切に行えるようにすることである。そして、認知症の人への支援体制構築の担い手となることを目指している。

 研修の標準的なカリキュラムは、認知症の人本人とその家族を支えるために必要な基本知識や、医療と介護の連携の重要性等の習得に向けた、①基本知識、②かかりつけ歯科医の役割、③連携と制度―としており、それぞれに到達目標を設定している。

 研修の実施主体は都道府県及び指定都市であるが、事業運営の一部を適切な事業運営が確保できると認められる関係団体等に委託することができることとなっている。

 実施主体の長は、研修修了者の情報を各都道府県歯科医師会、その他関係団体と連携し、研修修了者の同意を得た上で、修了者リスト等を作成・更新し、地域の認知症医療体制の推進及び管内の認知症の人及びその家族等の受診の利便性に資するため、各市町村や各市町村が設置する地域包括支援センターに配布するなどとしている。また、研修受講者の募集に当たっては、各都道府県歯科医師会、関係団体等の協力を得て行われている。

 本研修事業は、地域医療介護総合確保基金を活用して実施されているケースがほとんどである。その他、例えば、都道府県が主体となって実施する医療や介護の多職種での研修会や会議等、都道府県内の認知症医療と介護の連携の構築に資する取組につ いては、「認知症総合戦略推進事業」のうち、「認知症総合戦略加速化推進事業」に該当するため、国から一部費用補助があり、地域での認知症対策に効果的に活用されることが期待される。

 なお、日本歯科医師会としては、地域での認知症対策の進展に向けて、厚生労働省事業に積極的に協力しており、次年度以降の研修の在り方についても、▽研修受講の対象者を歯科衛生士、受付等のスタッフまで拡大する、▽研修プログラムにつき、アドバンストコース等を設けて幅を持たせる―などを要望している。

研修内容とその到達目標、新オレンジプランの概要等は以下の通り。

研修内容とその到達目標

①基本知識:▽認知症の現状及び病態やその特徴の理解、▽認知症診療・ケアの概要とプロセスの理解

②かかりつけ歯科医の役割:▽かかりつけ歯科医の役割の理解、▽認知症の人(疑いを含む)の認知機能障害によって生じる症状の理解、▽症状に配慮した歯科医診療の実施、▽スタッフ教育及び歯科医院全体での患者・家族の支援

③連携と制度:▽認知症の人を地域の連携体制で支える仕組みとかかりつけ歯科医の役割の理解、▽介護保険制度のサービスの本人・家族への説明、▽成年後見制度、高齢者虐待防止法等の権利擁護に関する制度の概要説明

新オレンジプランの概要

趣旨

 平成27年1月27日に策定。いわゆる団塊の世代が75歳以上となる平成37年を目指し、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現することが目的。厚生労働省が内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省と共同して策定した。関係府省庁が連携して認知症高齢者等の日常生活全体を支えるよう取り組んでいくとしており、改訂された戦略は平成32年度末等を当面の目標設定年度としている。

戦略の柱

 ①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進、②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供、③若年性認知症施策の強化、④認知症の人の介護者への支援、⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進、⑥認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進、⑦認知症の人やその家族の視点の重視―の7つ。それぞれに具体的な施策を掲げている。

歯科関係の主な事項

 特に歯科の観点からは、戦略の柱の一つである「②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」において、発症予防の推進に向けて、口腔機能の向上、運動、栄養改善、社会交流、趣味活動など日常生活における取組が、認知機能低下の予防につながる可能性が高いことを踏まえ、住民主体の運営によるサロンや体操教室の開催など、地域の実情に応じた取り組みを推進していくことが明記されている。

 また、早期診断・早期対応のための体制整備に向けた、「歯科医師認知症対応力向上研修」の実施などが掲げられている。

その他

 医療・介護等の有機的な連携の推進に向けて、認知症ケアパス(認知症の容態に応じた適切なサービス提供の流れ)の確立や、医療・介護関係者の「顔の見える関係」を構築し、情報共有を進めるとともに、地域ケア会議(地域包括ケアシステムの構築のために、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進め、実現していく手法)における認知症に関わる地域資源の共有・発掘・連携の推進、認知症地域支援推進員の配置等を進めていくことなどが盛り込まれている。

 また、認知症に関する正しい知識と理解を持って、地域や職域で認知症の人やその家族を手助けする「認知症サポーター」の養成を進める。具体的には、サポーターが地域でできる活動事例等の紹介や復習を兼ねた学習の取組など、活動につなげるための養成講座の推進を通じて、平成28年度末で累計880万人のサポーターを平成32年度末には1,200万人に拡大を図る。