2024年09月05日
8月28日に公表された令和7年度の厚生労働省全体での予算概算要求額は約34兆2,763億円であった。そのうち、歯科保健医療関連の概算要求総額が令和6年度予算額の11.8%増の46億 4,200 万円であることについて、日本歯科医師会は、歯科保健医療施策をより充実・強化するために必要な最低限の要求が行われていると考えている。今回、歯科関連において注目すべき点としては、「骨太の方針 2024」に記載されている「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組の推進」と「歯科保健医療提供体制の構築と強化」に関連する「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)環境整備事業」並びに「歯科医療提供体制推進・支援事業」が、これまでの事業成果を踏まえ、予算も含めた事業内容が拡充されたことであり、この点は評価をしたい。
1)「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)環境整備事業」については、 受診率が低い就労世代に対するモデル事業に加え、これまでの事業成果を踏まえ、全世代を対象にライフコースや目的に応じたモデル歯科健診・啓発等の実施支援・検証を行うこととなっている。具体的に、調剤薬局等の待ち時間やショッピングモール等の場を利用し、歯科健診未受診者をターゲットにする全世代を対象とした新たな事業も提案されている。 これは、いわゆる国民皆歯科健診の実現に向けて集中的に環境整備に取り組み、具体的な推進のための施策の一つとなることが期待され、歯科健診の拡大のきっかけとなると思われる。保険者・事業所等における効果的・効率的な歯科健診導入支援とともに、健康教育や受診勧奨を目的とした啓発等を実施し、歯科疾患の予防・重症化予防を進めていくことが不可欠であると考える。
2)歯科保健医療提供体制の構築と強化では、従来の「歯科医療提供体制構築推進事業」が、新たなモデル事業の新設に伴い「歯科医療提供体制構築推進・支援事業」となり、また「地域拠点病院・地域拠点歯科診療所施設整備事業」や「へき地巡回診療車(船)整備事業」については、予算規模等が拡充されている。具体的には、歯科医療機関の機能分化や連携、病院歯科の効果的な活用、災害時の体制など歯科医療提供体制の構築のためのモデル事業の新設や病院への歯科の設置に対する支援、無歯科医地区等のへき地における歯科医療の確保として巡回診療車等への整備といった、事業の拡充が示されている。これらは各地域における歯科医療提供体制の課題を解決するための重要な予算であり、多くの地域に存在する課題を解決し、地域特性に応じた体制構築に向けて獲得を期待したい。
3)「骨太の方針 2024」において、「歯科衛生士・歯科技工士等の人材確保の必要性を踏まえた対応」が記載されたことから、「歯科衛生士の人材確保実証事業」及び「歯科技工士の人材確保実証事業」において、それぞれ、より効果的な人材確保対策に関する検討を実施することになっている。これまで実行されてこなかった事業の成果や課題の収集・分析と評価を行うことは、より効果的な復職・離職防止策の全国での横展開に向け重要であり、復職促進に向けた就労支援の実効性のある方策の検討に期待したい。
地域における適切な歯科保健医療の提供において、各地域で必要な歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士を確保することは極めて重要であり、それぞれの職種における偏在対策や需給推計は喫緊の課題といえる。今後、地域の歯科医療資源の実情も踏まえ、需給推計を含めた歯科専門職の適切な数の把握および偏在対策に努めていただきたい。
その他、歯科医師臨床研修のための関係費用として、「共用試験(CBT)公的化に係る体制整備事業」、歯科医療従事者等の資質向上では、「歯科専門職の業務の普及啓発事業」が提案されており、歯科専門職としてのやりがいや魅力ある業務を周知することは非常に重要と考える。
最後に、我が国の歯・口腔の健康をさらに推進する上で、本概算要求のとおり財源を確保し、予算を確実に執行することが不可欠であり、日本歯科医師会としても協力を行っていきたい。