PC表示に切り替えるスマートフォン表示に切り替える
  • HOME
  • プレスリリース・活動報告|No.075 「経済財政運営と改革の基本方針2019」について

プレスリリース・活動報告

プレスリリース・活動報告プレスリリース・活動報告

「経済財政運営と改革の基本方針2019」について

 本日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針2019)」について、本会は、従来の記載に引き続き、「人生100年時代に対応した全世代型の社会保障制度を構築し、世界に冠たる国民皆保険・皆年金の維持、そして次世代への継承を目指す」と明記されたことを評価する。

 また、2017年の骨太の方針以来、継続して示されている歯科口腔保健の充実について、骨太の方針2019では更に、エビデンスの信頼性の向上、フレイル対策への歯科の関わり、介護、障害福祉関係機関との連携や保険者インセンティブのなかで歯科健診の配点割合の増加などが明記され、本会が発信してきた方向性が更に幅広く明記されたことを高く評価する。

 これまで本会は口腔の健康と全身の健康について様々なエビデンスを発信し、国民の深い理解を得てきたところであるが、更なるエビデンスの充実をもとに、疾病予防や国民の健康の増進に寄与したい。生涯に亘る歯科健診は優先すべき重要な課題と位置づけており、制度の充実も含め、行政、保険者とも協力しつつ更に推進したい。フレイル対策における口腔健康管理の重要性が示されたことは先見的な方向性であり、このことを踏まえ本会はオーラルフレイル対策を更に推進していく。全ての国民に対する口腔機能管理は歯科口腔保健の充実の中核をなすもので、地域における医科歯科連携をはじめとした多職種連携に加え、要介護者、障害者に対する歯科保健、歯科医療の適切な提供の視点が明記された意義は大きく、国民の健康に資する歯科保健医療提供体制の構築を盤石にするための政策を提言していく。

 本会は、超高齢社会における歯科医療の新しい役割と責任として、従来の歯や口の形態修復のみならず、口腔機能の維持・向上による国民の全身の健康増進と健康寿命の延伸に寄与し、それを通じて医療の財政面にも貢献することを目指している。更に30年間展開してきた8020運動にオーラルフレイル対策等の取組みを加えるとともに、国が明確に示し続けている「全てのライフステージでの歯科健診の推進」等を強力に実行していきたい。

 日本歯科医師会はこの他、骨太の方針2019について、以下のように考える。

  • 日本経済の現状と課題について

 低成長ではあるが、「いざなみ景気」を超えたとされる戦後最長の景気回復基調は、これまでの経済政策によるものと評価しており、このことは国民の安心感を醸成する上で極めて重要である。景気が悪化した場合には本来医療を受けなければならない者に対し受診抑制に繋がる可能性があり、今後も政府の経済政策に期待する。

 また財政再建は課題であるが、国の根幹となる持続性のある安定した社会保障があってこそ経済の好循環も生まれ、財政再建に繋がるものと認識している。本会は口腔の健康は、健康寿命の延伸に資するもので、財政面でも貢献できる具体的なエビデンスを示している。

 

  • Society5.0の実現について

 これまで政府が提唱してきたSociety5.0の実現の加速が明記された。医療における個人の健康情報の利活用などにおいて歯科健診の充実とそのデータの活用についても十分な議論が深まり、歯科口腔保健の推進に資する方策となることを期待する。一方、データセキュリティの問題や、現場での運用などで乖離や混乱が生じることが無いよう将来に向けて綻びが生じぬよう引き続き注視していきたい。

 マイナンバーカードの健康保険証利用について、歯科医療機関においては、診療報酬のオンライン請求はまだまだ低い普及状況であり、本取組みへの遅滞や歯科医療機関間での差が生じることなく支援が進み、患者にとっても受診抑制や混乱等が生じないよう十分な配慮等を求めたい。

 

全世代型社会保障への改革について

 人生100年時代の全世代型社会保障の構築の基盤が「健康」であることは論を俟たず、健康寿命の延伸や健康格差を生じさせないようにするための疾病予防、重症化予防等において歯科が期待されている役割を果たすための政策的対応を求める。

 

少子高齢化に対応した人づくり革命の推進について

 歯科衛生士や歯科技工士の人材確保は、求められている歯科保健医療提供体制整備の根幹に関わる喫緊の問題である。新たな人材の養成と未就業の有資格者の活用、離職者の復職支援における、公的な財政面での支援や制度の充実が急務である。

 

防災・減災と国土強靱化について

 近年、大規模自然災害が続いているが、被災地域の経済的復興と共に住民の心身の健康の維持や回復の取組みは遅滞なく行われなければならない。将来発生しうる災害時には、劣悪な環境下にある避難所での口腔健康管理による基礎疾患などの悪化や災害関連死の防止において歯科の役割は重要であり、引き続き災害派遣等に即応できる体制を充実させていきたい。

 

共生社会づくりについて

 「認知症施策推進大綱」を踏まえ、認知症と共生する社会作りの中で、かかりつけ歯科医としての認知症対応力を向上させ、日常の歯科医療の中での認知症の早期発見、早期対応、関係する医科医療機関や介護専門職との連携体制の構築などを推進したい。

 

医療・介護制度改革について

 医療費の地域差縮小については、地域の人口構造、疾病構造、医療提供体制が異なることから外形的な差異を、地域住民個人や個々の医療機関に負担させるべき問題ではなく、地域差の要因分析と地域差解消の方策を慎重に検討すべきである。併せて、高齢者の通院困難や経済的理由による受診控えが生じないような社会基盤の整備や低所得者に対する十分な支援などの方策が必要と考える。

 

当面の経済財政運営と令和2年度予算編成に向けた考え方について

 公的医療保険制度の基本理念は、社会が一体となって患者を支えることであり、国民の全てが、医療保険制度、介護保険制度に安心感をもてることが、消費の活性化につながり、経済の活性化を支えるものと考える。

 経済・財政計画の基軸とも言える消費税率引き上げについては、確実かつ適切に実施すると共に、得られる社会保障の充実の為の財源についても、医療を後回しにすることがないよう重ねて要望したい。