2023年06月01日
日本歯科医師会(以下、日歯)など41団体で構成する国民医療推進協議会の第17回総会が5月31日、オンラインで開催され、政府に対して「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」に、令和6年度トリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応の明記と、必要財源を確保することを強く要望する決議を全会一致で採択しました。
同協議会の副会長を務める日歯の堀憲郎会長は挨拶で、昨今の物価高騰は、個人立の小規模診療所が75%以上を占める歯科医療機関にとって、極めて影響が大きいことから、日歯では昨年夏以来、会員への経営実態調査を行い、その結果を踏まえて厚生労働大臣をはじめとする各方面に、繰り返し支援を要望し、それを踏まえていくつかの支援策が採られてきたことに感謝の言葉を述べました。
その一方で、その後も物価高騰などは厳しい状況が続いており、さらなる対策が必要との認識を示しました。特に、診療報酬、介護報酬等は公定価格で定められていることから、器材、材料、水道光熱費、賃金等の上昇を報酬に転嫁できず、経営が圧迫されていると強調。そして、この問題は歯科のみならず、医療、介護を含む分野全体に共通するもので、国民医療推進協議会の加盟団体が問題を共有し、国民の健康と生命を守る立場で決議を発信する意義は大きいと話しました。
さらに、歯科医師、スタッフに対する感染リスクが高いとされる歯科においては、新型コロナウイルス感染症の類型が下がっても、厳格な感染防止対策を直ちに解除することは難しく、また今後のさらなる不安要因として、医療DX推進に伴う費用も想定を超える負担増につながることに懸念を示しました。加えて最近は子ども、子育て、少子化対策の財源について、社会保障費を削減して捻出するような報道もあり、極めて憂慮していると述べました。
その上で、少子化対策が重要であることは十分に認識しているが、国民の健康と生命を守るために、物価高騰、賃金上昇などへの緊急の対応や、次期トリプル改定における十分な財源確保に向けた対応を強く求めたいと話しました。
決 議 エネルギー価格の高騰や、それと相まって人件費の上昇をはじめとする急激な物価・賃金高騰の状況にある。しかしながら、公定価格により運営する医科歯科医療機関、薬局、介護施設等は、価格に転嫁することができず、物価高騰と賃上げへの対応には十分な原資が必要である。 一方で、こども・子育て、少子化対策は大変重要な政策であるが、病や障害に苦しむ方々のための財源を切り崩してはならない。 国民の生命と健康を守るため、全就業者の約12%(約800万人)を占める医療・介護分野の就業者がしっかりと役割を果たせるよう、医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取組を進め、国民に不可欠な医療・介護を確保する必要がある。 よって、「骨太の方針」に、令和6年度のトリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応を明記していただき、必要財源を確保することを、本協議会の総意として、強く要望する。 以上、決議する。 |