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プレスリリース・活動報告

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3学会合同ステートメントを受けてのオーラルフレイルに関する見解について

 日本歯科医師会は4月11日、一般社団法人日本老年医学会、一般社団法人日本老年歯科医学会、一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会による3学会合同ステートメントを受けてのオーラルフレイルに関する見解を発表しました。見解の内容は次の通り。

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 本年4月1日(月)、オーラルフレイルに関して一般社団法人日本老年医学会、一般社団法人日本老年歯科医学会、一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会による3学会合同ステートメントが発表され、オーラルフレイルの概念・定義が整理された他、国民がセルフチェック可能な新たな評価法を提唱し、歯科を中心とした多職種連携及び医科歯科連携の中で対応することを明確にした。

 3学会合同ステートメントは、▽残存歯数減少(自身の歯は、何本ありますか)、▽咀嚼困難感(半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか)、▽嚥下困難感(お茶や汁物等でむせることがありますか)、▽口腔乾燥感(口の渇きが気になりますか)、▽滑舌低下(舌口唇運動機能の低下)(普段の会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますか)の5つの項目を新たなチェック項目(OF-5:Oral Frailty 5-item Checklist)として設定し、2項目以上該当する場合をオーラルフレイルとした。OF-5でオーラルフレイルと判定されると、将来のフレイル、要介護認定、死亡のリスクが高いことが示されている。また、オーラルフレイルは身体的フレイルだけでなく、社会的フレイルにも関連することも示された。

 オーラルフレイルは2014(平成26)年に提唱された日本発の概念である。3学会合同ステートメントでは新たに「口の機能の健常な状態と口の機能低下との間にある状態」とするとともに、「オーラルフレイルは、歯の喪失や食べること、話すことに代表されるさまざまな機能の『軽微な衰え』が重複し、口の機能低下の危険性が増加しているが、改善も可能な状態である」と定義づけた。

 日本歯科医師会は2015(平成27)年3月、従来の8020運動に加えて「オーラル・フレイル」(当時の表記)を新たな国民運動として展開させていくことを発表した。2018(平成30)年12月には国民向けリーフレット『オーラルフレイル』を作成した。歯科医師への普及啓発としては2019(令和元)年5月、『歯科診療所における オーラルフレイル対応マニュアル2019年版』を作成した。

 また、2020(令和2)年6月には、市町村・保健所で行うオーラルフレイル対策の展開に向けた『通いの場で活かす オーラルフレイル対応マニュアル~高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に向けて~2020年版』とその概要リーフレットを作成した。本マニュアル及びリーフレットは、令和2年度からの高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に対応すべく、オーラルフレイルの概要やオーラルフレイル対策に対応する市町村事業の紹介などの他、市町村・保健所で取り組みやすくなるよう、各地の事例等を交えての通いの場におけるオーラルフレイル対応例などで構成している。

 これらのリーフレットやマニュアルは全て日本歯科医師会ホームページに掲載しており、ダウンロードして活用できるようにしている。
 他方、国においては、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針2021)」に初めて掲げられて以降、毎年オーラルフレイル対策が記載されている。2024(令和6)年度から2035(令和17)年度までの「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第2次)」においては、大きな方向性としてオーラルフレイルが明記された。このように、オーラルフレイルが国の公文書に記載されつつあるが、概念を含めて曖昧さが二の足を踏む結果となっていたところも少なくないのが実情である。

 オーラルフレイルは、可逆的であることが大きな特徴の一つである。つまり、早期に気づき適切な対応をすることでより健康に近づく。オーラルフレイルの始まりは、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増える、口の乾燥等ほんの些細な症状が重複して生じる「口の軽微な衰え」であり、見逃しやすく、気が付きにくいため注意が必要になる。

 また、厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」によると、「左右両方の奥歯でしっかりかみしめられない」者は20代17.1%、30代18.5%、40代45.0%、50代33.6%、60代45.8%、70歳以上43.3%であった。年代が上がるにつれて割合が高くなることはもちろん、20代の約2割が問題を抱えており、若年のころからのオーラルフレイル対策が不可欠であることは論を待たない。

 3学会合同ステートメントでは、「食べる、飲み込む、話すなど様々な『口の機能の障害』及び身体的フレイル・社会的フレイル・サルコペニア・低栄養といった次のレベルの障害の発症や重症化を食い止めることにつなげたいと考えている」としているが、日本歯科医師会も同じ考えである。
 3学会合同ステートメントを踏まえて、“誰一人取り残さない口腔健康管理・オーラルフレイル対策”の産学官民一体による展開、すなわち、人生の最期まで美味しく食べていただくために、従来からの国民運動である「8020運動」をさらに発展させ、若年層からの口腔疾患の継続管理・重症化予防の推進による国民の健康増進・健康寿命の延伸、地域共生社会の実現に向けて厚生労働省等と共有を図り、「オーラルフレイル対策」が国策等に反映されるよう対応していく。併せて、口腔健康管理、オーラルフレイルの関係各所や国民への普及啓発及び多職種連携を図る。また、公益財団法人8020推進財団や各種学会と連携してオーラルフレイルに関する調査・研究の収集・分析を進めていく。

 

参 考