2017年12月01日
今回の診療報酬と介護報酬の同時改定は、平成12年の介護保険制度施行から平成18年度、平成24年度に引き続き3回目で、2025年の地域包括ケアシステムの構築に向けて「非常に重要な分水嶺」である。診療報酬と介護報酬との連携・調整をより一層進める観点から、中医協及び介護給付費分科会の関係委員間で医療と介護の連携に関する意見交換が、平成29年3月と4月の2度に亘り開催された。同意見交換において、日本歯科医師会は、「患者・利用者の求めに応じた必要な歯科医療・サービスの提供」という観点から、▽医療と介護の切れ目のない提供環境の整備、▽口腔健康管理に対するケアマネジャーの理解の向上、▽介護保険施設等の協力歯科医療機関の役割の検討、さらにデイケア(通所リハビリテーション)やデイサービス(通所介護)への歯科医療の提供についての必要性を発言してきた。
また、介護給付費分科会では、6月7日の第140回において口腔に関する議論がなされ、日本歯科医師会は、口腔衛生管理が誤嚥性肺炎の減少等、専門性の活用によってより効果が高まることから、専門性の活用をさらに幅広く様々な場面で活かしてほしい旨の発言をしている。
その後の具体的な介護報酬改定に向けた介護給付費分科会の議論においては、11月8日の第150回介護給付費分科会では「居宅療養管理指導」について、同22日の第152回では「医療・介護連携の強化」に関して医療機関とケアマネジャーの連携について、同29日の第153回では「口腔衛生管理体制加算」、「口腔衛生管理加算」の見直し等、口腔に関して、それぞれ議論がなされた。
「居宅療養管理指導」については、単一建物居住者が1人の場合と、2~9人の場合、10人以上の場合と人数に応じて評価する見直し案が示された。日本歯科医師会としては、小規模診療所がほとんどである歯科においては、同一月での単位数の変化などから運用上の負担が増加する可能性が想定されることに鑑み、運用に当たっては混乱を来すことがないよう要望した。また、訪問歯科診療を行った歯科医師の指示及びその歯科医師の策定した訪問指導計画に基づき歯科衛生士が行う「居宅療養管理指導」の実施回数に関しては、現行と同様の4回が必要であることを主張。一般的な口腔ケアよりもさらに専門性の高い内容が必要とされ、特に歯周疾患等を想定して上限設定がされていることを踏まえ、設定への配慮を求めている。
「医療・介護連携の強化」については、平時からの医療機関とケアマネジャーとの連携の促進を図る観点から、介護事業所等から伝達を受けた口腔に関する問題等をケアマネジャーが歯科医師等に情報の提供を行うことを明確化するという案が示された。日本歯科医師会は、先に示したように口腔健康管理に対するケアマネジャー理解の向上を要望しており、今回、一歩前進したが、より緊密にケアマネジャーとの連携を行うため、必要な対応を行っていきたい。
「口腔衛生管理体制加算」は、歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導を月1回以上行っている場合に、施設サービスとして算定するもの。日本歯科医師会は、専門性の活用をさらに幅広く様々な場面に広げていくことを要望しており、今回、施設サービスに加えて、▽認知症対応型共同生活介護、▽特定施設入居者生活介護(以上、介護予防含む)、▽地域密着型特定施設入居者生活介護といった居宅系サービスの追加という厚生労働省の案に賛同している。
佐藤保委員(中央)
(11/29、第153回介護給付費分科会)
「口腔衛生管理加算」については、口腔ケアの推進による誤嚥性肺炎の減少等の効果があることから、対象者の拡大を行う観点から見直し案が示された。具体的には、算定要件である口腔ケアの実施回数を現行の月4回から月2回に緩和するとともに、歯科衛生士が入所者への口腔ケアについて、介護職員に対して具体的助言及び指導を行った場合、介護職員から入所者の口腔に関する相談等に必要な対応をした場合に算定する方向とされている。現行では、「口腔衛生管理体制加算」を算定している介護保険施設において、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が入所者または入院患者に対する口腔ケアを月4回以上行っている場合に算定できることとなっている。日本歯科医師会としては、口腔衛生管理加算の対象者が、居宅療養管理指導の対象者と異なり、重度の歯科疾患の無い者が対象であること等から、対象者の拡大を行うための算定要件の見直し案に一定の理解を示し、また、医療と介護の同時改定であることから、医療と介護の連携を深め、患者の求めに応じて必要な医療が提供出来るよう訪問歯科衛生指導料との関係の見直し等を求めている。
なお、今後の介護保険と医療の同時改定の議論、介護保険への歯科の対応においては、介護保険部会への歯科の参画は是非とも必要であり、その要望を継続する必要がある。