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プレスリリース・活動報告

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「経済財政運営と改革の基本方針2021」について

 本日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針2021)」について、以下の通り日本歯科医師会として見解を示す。

 新型コロナウイルス感染症へ向き合って一年半が経過する。この間、様々な対応がなされたが、今後は感染症のコントロールとあわせて、これまでの対応の検証が求められる。
 日本歯科医師会は今回の新型コロナウイルス感染症に対峙しつつ、今後待ったなしの課題となる20年後の人口減少問題等への対応を示す「2040年を見据えた歯科ビジョン」を取り纏めた。
 その内容は、今回の骨太の方針2021と密接に関わるものが多く、それらを中心に今後とも具体的な提言をして参りたい。
 本会は、今後、歯科医療機関の受けた経済的ダメージの回復をはかりつつ、欠くべからざる歯科医療提供、口腔健康管理の維持・強化により、国民の健康と生活を守る立場から貢献していきたい。

骨太の方針2021の歯科に関わる内容全体について

 本会は、今回の骨太方針の取り纏めに向けて、次の内容を提言してきた。

●歯科医療、口腔健康管理の充実を通じて国民の健康寿命の延伸に向けて取り組んでいるが、いずれも緒に就いた段階、或いは道半ばであることから、新たな骨太の方針2021には現行の「骨太の方針2020」の歯科に関する記載内容を継続し、充実させる。
●「全身のフレイル」の早期発見と対応のために、歯科分野での「オーラルフレイル対策」が極めて重要であり、国民の認知を高めるためにも、歯科に関しては「フレイル」の表現を「オーラルフレイル」の表現で具体的に示す。
●今後の人口減少と極端な少子高齢化による高齢者の孤立や、通院困難者の増加への対応を視野に入れた、歯科における情報通信機器の整備やオンライン歯科診療等を含む、ICTの活用の方向性を示す。
●「感染防止に有効な口腔健康管理の推進」の視点を明記する。

 本日閣議決定された「骨太の方針2021」では、

 全身との関連性を含む口腔の健康の重要性に係るエビデンスの国民への適切な情報提供、生涯を通じた切れ目のない歯科健診、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防にもつながる歯科医師、歯科衛生士による歯科口腔保健の充実、歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉機関等との連携を推進し、歯科衛生士・歯科技工士の人材確保、飛沫感染等の防止を含め歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。今後、要介護高齢者等の受診困難者の増加を視野に入れた歯科におけるICTの活用を推進する。

として纏められ、提言してきた内容のほぼ全てが反映された。
 歯科界が目指す「歯科医療と口腔健康管理の充実により、国民の健康寿命の延伸をはかり、働き手や支え手を増やす」との方向性を国が共有していることを高く評価するとともに、関係各位のご尽力に深く感謝したい。

歯科に関わる具体的対応について

 「骨太の方針2021」に記載された歯科部分の内容は、既述の「2040年を見据えた歯科ビジョン」にも記載されており、その実現に向けたアクションプランに沿って必要な対応を進めていく。
 「口腔の健康の重要性に係る国民への適切な情報提供」については、これまで整理と発信してきたことに加えて、最近のビッグデータの分析調査結果等を整理して発信していく。また口腔の健康と全身の健康の関連についてのエビデンス、口腔健康管理が感染予防に繋がるエビデンス等も更に収集、整理していく。
 「生涯を通じた歯科健診の必要性」は広く認知されており、妊産婦、成人期、高齢期における歯科健診の制度化を引き続き強く働きかけていく。
 オーラルフレイルへの国民の認知度はまだ低く、「2040年を見据えた歯科ビジョン」にも「2025年までに認知度を50%にする」との目標値を示している。オーラルフレイル対策は歯科界が一丸となって展開するものであり、その普及に向けた資料整備等の準備は整っている。国には市町等における具体的な事業推進への支援を求めつつ、国民の理解のもとで国民と共に推進していく。
 「歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉機関等との連携」は、特に今後の感染症対応においても重要な視点であり、今回の新型コロナウイルス感染症対策の検証をしつつ連携を強化する。特に一連の自粛生活下での要介護者や寝たきり者への影響について、精緻な検証が必要である。これに関連して、激甚化、複合化する災害への対応についても、不自由な避難所生活での誤嚥性肺炎等による災害関連死防止のための口腔健康管理について、医療連携のもとでのウイルス感染対応という新たな要素が加わる。連携のあり方についての議論を深めつつ、引き続き災害派遣等に即応できる体制を充実させていきたい。
 「歯科衛生士・歯科技工士の人材確保」は、長年国に支援を求めてきた。歯科医療提供において両職種が果たす役割は大きいものの、いずれも養成校への受験生確保が困難な状況が続き、歯科医療現場でも人材不足が起きている。今後の生産年齢人口の減少の加速を踏まえれば、早急な対策が必要である。
 「飛沫感染等の防止を含め歯科保健医療提供体制の構築と強化」について、最近は感染経路が不明な事例が増えているものの、新型コロナウイルス感染の発生から少なくとも1年余り、歯科治療を通じての感染拡大の事例報告がないことを含めて、感染防御対策の効果やコストも検証し、今後の流行に備える必要がある。
 「歯科におけるICTの活用」について、感染症拡大下において、対面診療ではない患者への指導管理や、ウイルス感染者への緊急歯科医療等への活用について、評価のあり方を含めて議論を深めたい。また感染者への緊急歯科治療に対応可能な、重点病院や指定病院等と診療所との連携や地域行政と地域歯科医師会との連携体制の更なる整備と明確化も将来への備えとして必要と認識される。デジタル化、オンライン化の推進に関して、一連の感染症対応で、我が国の立ち後れが明確な部分は速やかに対応を進めるべきと考える。一方、データセキュリティの問題等について、これまで慎重な議論を重ねてきた部分を拙速に推進することなく、国民のいっそうの理解を得ることが極めて重要である。そのような前提で、Society5.0の実現に向け、PHRなどの健康情報や医療情報の利活用について、更に議論を深め、歯科保健医療においても、例えば歯科健診内容等を統一してデータ活用することより歯科口腔保健の推進に資することを期待する。