2020年12月15日
日本歯科医師会は、後期高齢者の窓口負担について「全世代型社会保障の議論をするのであれば、負担と給付のバランスの論点のみならず、生涯にわたり国民に健康で安心な生活をいかに保障するか、という議論が必要である」と指摘してきた。
あわせて、後期高齢者の窓口負担の増加は受診控えにつながり、新型コロナウイルス感染症による受診控えと重なり、誤嚥性肺炎の発症や疾病の重症化を招くリスクが高く、健康被害だけでなく、医療費、介護費用を増やすリスクがあることも指摘してきた。もともと歯科では後期高齢者の受療率が低いことからもそのことが強く懸念される。(下図参照)
今回の「所得水準200万円以上(上位30%〈現役並み区分を除くと23%〉)を2割負担とする」と決定されたことで、それらの危惧が募るところであるが、ギリギリまで議論が重ねられ、長期頻回受診患者等への配慮もなされた結果と理解する。
人生100年時代の人口減少問題に対して、健康な高齢者を増やし、支え手、担い手を確保することは必要不可欠であり、後期高齢者の窓口負担の今後の運用については、引き続き精緻な議論をお願いしたい。また受診控えを防ぐための広報や、後期高齢者歯科健診と必要な受診勧奨の推進を求めたい。
将来に向けて、生涯を通じ全世代に利益をもたらす分野は何か、そのような骨太の議論に向けて、日本歯科医師会は先に刊行した「2040年を見据えた歯科ビジョン」の方向性を踏まえ、生涯を通じた健康づくりに貢献し、その充実により、国民に安心を提供する責任を果たしていく。