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プレスリリース・活動報告

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「経済財政運営と改革の基本方針2020」について

 本日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太の方針2020)」について、日本歯科医師会として以下のように考える。

 新型コロナウイルス感染症は、我が国の未来に向けて、多くの問題を提起し、「有事において国民の生命をいかに守るか」という社会保障の原点ともいえる命題を突きつけるとともに、生活に様々な変化を求め続けている。この未曾有の危機的状況において、国の方針として「危機克服に向けた姿勢」とそのための「新たな日常の実現」が明確に示されたことを受け、歯科界としては、歯科医療機関の受けた経済的ダメージの回復を図りつつ、歯科医療、口腔保健を提供し、国民の健康と生活を守る立場から、国の方針を支えて貢献していきたい。

歯科に関わる内容全体について

 日本歯科医師会として、新たな骨太の方針には「骨太の方針2017以来、歯科医療の重要性について示してきた内容と方向性を継続して示すこと」および「新型コロナウイルス感染症を踏まえての新たな日常の中に、感染症予防対策としての口腔健康管理を含む歯科保健医療の役割を位置づけること」等を提案してきた。
 結果として骨太の方針2020では、「新たな日常に向けた社会保障の構築」の中で、「細菌性やウイルス性の疾患の予防という観点も含め、口腔の健康と全身の健康の関連性を更に検証し、エビデンスの国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診、フレイル対策・重症化予防にもつながる歯科医師、歯科衛生士による歯科口腔保健の充実、歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉関係機関との連携を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む」と明記された。
 骨太の方針2020では全体のボリュームが、これまでの半分以下に整理され、社会保障関連部分も1/3程度になる中で、歯科に関するこれまでの内容が維持され、それが「新たな日常」の中で示されたことを高く評価し、関係各位のご理解とご尽力に深く感謝申し上げる。
 期待に応えて「新たな日常で、感染防止対策としての口腔健康管理」を新しい重要なかかりつけ歯科医機能と位置づけて、責任を果たして参りたい。

 

歯科に関わる具体的内容について

 具体的な記載に関して、まず「口腔の健康と全身の健康に関するエビデンス」については、これまで整理と発信してきたことに加えて、新型コロナウイルス感染症に対しても、口腔健康管理が感染予防につながるエビデンスも早急に整理し、国民への適切な情報提供をしていく。
 「生涯を通じた歯科健診の充実」については、過去3年間における厚生労働省の実証事業結果等をオープン化し、具体的な展開を強く推進したい。
 「フレイル対策・重症化予防にもつながる歯科口腔保健の充実」については、既にオーラルフレイル対策の展開の準備は整っており、市町村等における具体的な事業推進への支援を求めていきたい。
 「歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉関係機関との連携」は、特に今後の感染症対応において重要な視点であり、これまでの新型コロナウイルス感染症対策の検証をしつつ、連携を強化する。
 その他、今後同様の感染拡大があった場合に、対面診療ではなく、在宅でどのような指導管理等を行うべきか、またウイルス感染者への緊急歯科医療に対応可能な、重点病院や指定病院等と診療所との連携や、地域行政と地域歯科医師会との連携体制の整備と明確化も必要である。
 今回「新たな日常」に対応した予防・健康づくり、重症化予防の推進の中に「新たな技術を活用した血液検査等の実用化」が明記され、また唾液を用いたPCR検査・抗原検査の研究推進も盛り込まれた。今回の新型コロナウイルス感染の検査に限らず、従来から歯科では唾液検査にはなじみが深く、関係学会から医療技術評価提案でも、唾液検査の歯科臨床への定着を求めるなど、唾液検査の有効性は将来に向けての歯科医療の課題のひとつである。関係部局との連携の中で議論を深め、今後の唾液を検体とする歯科領域の検査の充実と、糖尿病をはじめとする生活習慣病等の関わりにおける研究を加速したい。

 

その他

 デジタル化、オンライン化の加速について、一連の感染症対応で、我が国の立ち後れ、脆弱化が明確な部分は速やかに対応を進めるべきと考える。一方、データセキュリティの問題や現場での運用などについて、これまで慎重な議論を重ねてきた部分を闇雲に加速して、拙速な結果にならぬようにすることや、国民の理解を得ることが極めて重要である。
 そのような前提に立って、Society5.0の実現の中で、データヘルス改革によるPHRなどの健康情報や医療情報の利活用について、更に議論を深める必要がある。歯科保健医療においても、例えば歯科健診データの活用により、歯科口腔保健の推進に資する方策となることが期待される。
 激甚化、複合化する災害への対応については、不自由な生活環境である避難所での誤嚥性肺炎等による災害関連死の防止の為の口腔健康管理について、ウイルス感染への対応という新たな要素が加わる。そのあり方についての議論を深めつつ、引き続き災害派遣等に即応できる体制を充実させていきたい。
 薬価調査・薬価改定について、日本歯科医師会は、医薬品について通常の流通や価格交渉が行われておらず、調査を行って正確なデータを得ることは難しいことや、新型コロナウイルス感染症拡大防止に取り組んでいる医療現場に負担を強いるべきではないことから、薬価調査の見送りを求めてきた。調査を行うのであれば、医療現場や関係業界に過度の影響を及ぼさないようにすることを改めて求めるとともに、不正確な調査結果に基づく改定がなされぬよう、慎重な判断を求めたい。

 

まとめ

 「新たな日常」では、感染防止と口腔健康管理にいっそう目を向けた歯科医療提供が必要となる。「臨床現場における感染防止」については、新型コロナウイルス感染の発生から少なくとも半年間、歯科治療を通じての感染拡大の事例報告がないことも含めて、感染防御対策の効果やコストも検証し、今後の流行に備える必要がある。
 新たな日常の定着においては、その基本的インフラである医療提供体制の整備と強化が大前提となるが、全国の歯科医療機関では、国の自粛要請等で生じた受診控えにより、経営が困難となっており、骨太の方針2020に記載の通り、令和2年度第二次補正予算等で講じられた支援策の迅速かつ円滑な実施とともに、今後に向けての継続した支援を求めたい。
 また同じく骨太の方針2020にある通り、これまでに得た教訓を踏まえて、医療現場の感染防止の基本となる衛生用品の生産、確保、供給、備蓄については、国として確固かつ綿密な管理体制を構築願いたい。
 以上のような考え方のもとで、歯科界は一丸となって世界危機克服に向けて、新たな日常の中で新しい歯科医療提供体制を構築し貢献していく。