

歯みがきでインフルエンザの発症リスクが “約10分の1” に!
近年の研究では、口の中を清潔に保つことでインフルエンザなどの感染症の発症リスクを大きく減らせることが報告されています。
特に、毎日の歯みがきや口腔ケアをしっかり行っている人は、そうでない人に比べてインフルエンザの発症リスクが約10分の1に低下したというデータも示されています(図1)(Abe S. et al. Arch. Gerontol. Geriatr., 43: 157-64, 2006)。
なぜ歯みがきがインフルエンザ予防に役立つの?
口の中には多くの細菌が存在し、その中にはウイルスが体内に侵入したり、体の中で増殖したりするのを助けてしまう酵素をつくる細菌もあります(図2)(Kamio N. et al. Cell Mol. Life Sci., 72: 357-66, 2015, J. Biol. Chem., 301: 108166, 2025)。
歯みがきや口腔清掃によってこれらの細菌が減ることで、ウイルスが感染しにくい環境をつくることができると考えられています。
毎日の口腔衛生習慣で感染・発症リスクが軽減します。
朝・昼・夜の1日3回の歯みがき
舌の清掃(舌ブラシややわらかい歯ブラシで)
うがいを併用して口腔内を清潔に保つ
歯科医院での定期的な専門的クリーニング
口腔ケアは “歯のため” だけではありません
インフルエンザだけでなく、誤嚥性肺炎の予防や全身の健康維持にもつながることが明らかになっています。
毎日の歯みがきが、あなた自身と周りの人を守る一歩になります。
(監修:日本大学歯学部感染症免疫学講座 今井健一教授)
図1 口腔衛生管理とインフルエンザ(参考文献2、P96、図3を引用).
高齢者に対して口腔ケア(口腔衛生管理)を実施した結果、インフルエンザの発症が抑制されたことが報告されています。
図2 口腔細菌によるインフルエンザウイルスの感染促進メカニズム(参考文献2、P97、図4を引用).
歯周病原菌が産生するタンパク質分解酵素(ジンジパイン)によって、インフルエンザウイルスのHA(ウイルスが細胞に取り付くための突起)が開かれてウイルスは宿主細胞に侵入しやすくなります。その結果、ウイルスが感染しやすくなる可能性があります。
また、細胞内で増殖したウイルスが細胞外へ放出される際にも、口腔細菌が産生した糖質分解酵素(ノイラミニダーゼ)によって細胞内で増えたウイルスが細胞の外への放出されやすくなります。その結果、感染の拡大がおこりやすくなる可能性があります。
インフルエンザ予防について、より詳しい内容は以下のコンテンツなどをご覧ください。