歯のホワイトニング
広い意味での「ホワイトニング」は、茶渋やタールなどの歯の表面に沈着した色素を除去したり、いろいろな原因で変色した歯を白くすることと定義することが出来ますが、その中には、歯を白くする効果を謳った市販の歯磨剤やデンタルリンス(あるいはマウスウォッシュ)を家庭で用いるものから、歯科医院で歯を削って人工の歯に置き換える治療まで、多くの処置が含まれます。
歯は削れば削るほど寿命を短縮することにつながりやすい事から、西暦2000年に世界歯科連盟が「最小限の侵襲による歯科治療」を提言しています。表1で、歯に対する侵襲は一般的に上位ほど少なく9までの下位ほど大きくなりますので、満足できる効果が得られるのであれば、より侵襲の少ない処置を選びたいものです。
狭い意味での「ホワイトニング」は、歯を削らずに漂白剤(主に過酸化水素)で化学的に白くするブリーチあるいはブリーチング(漂白)のことを指します。漂白法には適応症と非適応症があって万能的な処置法ではありません。変色した歯を白くするための1手段ですので、症例によっては他の方法に委ねなくてはならない事もあります。
歯の変色には様々な原因がありますが、茶渋やタバコのタールなど外来色素が表面に沈着した場合には、多くの場合、プロによる歯面研磨(写真1)だけで歯本来の色を取り戻すことが出来ます(写真2、3)。
乳幼児期に服用した薬・テトラサイクリンが原因で生じる濃い変色(写真4)は、有髄歯漂白の難症例ですが、歳を重ねるとともに生じる歯の黄ばみ(写真5)は漂白の最適応症です。前歯の表面を少し削って薄いセラミックを張り付ける方法もあります(写真6)。
歯を白くしたいと希望された患者さん(写真7)に各種ホワイトニング法を用いて歯を白くしました(写真8)。金属製の詰め物や被せ物は漂白で白くすることは出来ませんので歯と同じ色の材料に置き換えます(写真9〜11)。むし歯の治療も歯と同じ色の材料で治すことが可能です(写真12)。
ご自分の歯でも金属イオンで変色した場合には漂白は不可能です。また、妊娠中、あるいは授乳中の女性は、胎児や乳児への漂白剤の影響が確認されておりませんので、その時期は避けた方が良いでしょう。
表1.歯のホワイトニングの種類
- ブラッシング(歯磨き)・マウスウォッシュ(白くする効果のあるもの)
- 専門家による歯のクリーニング
- 歯のマニキュア
- ブリーチング(漂白)
- 直接レジンラミネートベニア(歯の表面へのレジンの張り付け)
- ポーセレンラミネートベニア(ポーセレンシェルの張り付け)
- メタルボンドクラウン(陶材焼付鋳造冠)
- オールセラミッククラウン(陶材被覆冠)
- ポストクラウン(継続歯:継ぎ歯)
- その他 むし歯や金属の詰め物を除去して白い材料で治す
歯に対する侵襲は通常上位ほど少なく、9までは下位ほど大きい
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