広場へ > お口の病気と治療 > 歯科における漢方

歯科における漢方

漢方とは何ですか?

漢方とは、日本における中国系伝統医学の総称であり、その名前は、江戸中期にヨーロッパ系医学との対比において、在来の日本の医学を「漢方」すなわち、「漢に起源をもつ医学」と呼んだことに始まります。一方、東洋医学という言葉がありますが、これは日本独特の呼び名であり、主に漢方医学と鍼灸医学(鍼灸を用いた医療)を含む、中国文化を起源とする思想・治療体系に基づいて行われる医療の総称です。近年、漢方の学問は歯科医学にも普及しています(写真1)

東洋医学(漢方医学)と西洋医学の違いは何ですか?

東洋医学(漢方医学)と西洋医学の違いを一言でお話ししますと、現代医学を始めとする西洋医学は分析的・機械的・抽象的・普遍的・客観的であるのに対して、漢方医学は総合的・人間的・具象的・個人的・主観的傾向の強い医学であるということが考えられます(図1)。例えば、大学病院を受診する際に、まず病院の受付で、どの科を受診すべきか迷ったという経験はないでしょうか。大学や大病院などでは、診療はいわゆる縦割り≠ノよって行われ、臓器ごとに診療科が分かれています。さらに内科・外科・整形外科・口腔外科などの下に、同じ内科でも循環器科・呼吸器科・消化器科・神経内科などと細分化されています。循環器科でも、不整脈を扱う部門と、虚血性心疾患を扱う部門に分かれていたりします。

一方、漢方医学は初めから治療医学として発展してきました。基礎となったものは臨床経験の集積であり、理論的支柱となったのは自然哲学でした。したがって漢方には、現代医学における意味での基礎医学はありません。そこで基礎に置かれるのは、「患者と医療者」という具象的・現実的な関係性の世界でした。そして、どのような場合にどのような治療措置をとればよいかを具体的に追究すること、その経験を集積していくことに全エネルギーを傾けてきたと言ってよいです。患者‐医療者の関係には人格的結合の必要性が強調され、精神・身体を一丸とした全人的治療が模索されてきたという歴史を持つものが漢方医学です。

|| 次のページへ ||

ページトップへ