2018年5月10日
日本歯科医師会の考えを示す堀憲郎会長(中央)。その他、柳川忠廣副会長(左から2人目)、佐藤保副会長(左)も出席しました。
自由民主党の財政再建に関する特命委員会が5月10日(木)、都内の自民党本部で開催され、日本歯科医師会をはじめ日本医師会や日本薬剤師会、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会などにヒアリングを行いました。日本歯科医師会からは堀憲郎会長らが出席し、経済財政面の問題等について考えを説明しました。
堀会長は、長寿社会における歯科界の基本的な取り組みとして、単に長く生きるだけでなく、「食べる」「話す」「笑う」という日常生活の基本機能を、人生の最後まで全うできるよう支えていくとした上で、「国民の健康寿命の延伸をもって医療の財政側面に貢献していく」と考えを示しました。
また、口腔機能管理により、誤嚥性肺炎の発症が約 6 割以下に減少したことや、骨太の方針2017の歯科医療の記載にもつながった、口腔機能管理の実施により在院日数が減少したデータなど、口腔の健康と全身の健康の関係を説明。特に、周術期口腔機能管理の徹底により、がん治療の医療費が約15%減少した大阪警察病院でのデータを基に、がん治療だけでも、国レベルで約6千億円医療費が節約できる可能性があることを示唆しました。
さらに、新たなエビデンスとともに、咀嚼機能の維持と認知症の関係などを解説しました。
その上で、今般取り上げられている課題については、「負担能力のある高齢者に、 応分の負担を求める議論は必要だが、負担能力の有無の判断は慎重な議論を要する」としました。また、「口腔の健康が全身の健康につながる一方、歯科では窓口負担率の増加は受診控えにつながる傾向があり、結果として全身の疾病の重症化を招き、医療費増加となることが強く危惧される」と指摘し、税と社会保障一体改革で、これまで積み重ねてきた議論と対応を踏まえるとともに、社会が一体となって患者を支える公的医療保険制度の精神を失わない議論を求めました。
具体的な内容として、都道府県別に異なる診療報酬を設定することについては、「そもそも同じ制度の中で患者負担の地域差を生むことは大きな混乱を生じるとともに、不公平感からも国民の理解を得られないと考える。すでに始まっている第三期医療費適正化計画に地域で取り組み、その評価・分析を十分に行うことが先決」との見解を示しました。
経済状況により給付率を自動調整する考え方については、「超高齢社会を生きる国民の社会保障への安心を損ない、公的医療保険制度を支える理念を放棄する議論と受け止め危惧している」として、「これまで長年にわたり、薬価改定を含む診療報酬、患者窓口負担、保険料等のバランスを、その時の社会情勢等を踏まえて慎重に議論して決定してきた対応を堅持するべきである」との考えを述べました。
後期高齢者の窓口負担を一律2割に引き上げることについても、「高齢者の受診控え、疾病の重症化による医療費増加につながる」と危惧を示しました。
さらに質疑応答の中で、「医療界も一致して財政状況の改善に向けて、健康寿命の延伸に向けて取り組んでいる」と理解を求めるとともに、「危機意識に基づいて税と社会保障一体改革等の対応に取り組んできた。その計画に基づく消費税率引き上げ等を粛々と行うことが先決ではないか」と問題意識を述べました。