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広場へ > お口の予防とケア > フッ化物

:自分の子どもは年3回のフッ化物歯面塗布をうけており、むし歯はありません。各自が気をつければ、フッ化物洗口に要する保育士の負担が減って、その分よりよい保育を受けることができるのではないでしょうか。

:個人的におこなって期待どおりの成果があげられる人もいるでしょうが、きわめてまれな恵まれた人です。多くの人にとっては歯磨きの励行ですら実際には継続が困難であることが多いのです。公衆衛生的思想には人々の健康格差をなくすという崇高な理念があるのです。大切なことは、みんな(地域住民)の健康生活(QOL)の向上を図ることです。
 公衆衛生的なフッ化物応用はこの健康格差をなくすのに最も大きな効果をもたらします。また、フッ化物洗口を学校保健の一環として位置づければ、教育的な支援を受けることができるので、継続的な実施が確実なものとなり、よりむし歯予防の成果をあげることができることは、わが国の経験からも明らかです。


:水道水フロリデーションは個人の自由の権利を侵害するのではないでしょうか。

:水道水フロリデーションは地域単位で行う公衆衛生対策ですから、そこに住む住民すべての人々の健康増進を目的に行うのです。したがって、実施にはその地域の議会の承認で始まります。したがって、少なくとも民主主義国家では、私たちには投票行動による議会議員の選択の自由が与えられていることになります。
  今から60年以上前から水道水フロリデーションを進めてきた米国では、個人の自由の権利の侵害をめぐって、以前には少なからぬ訴訟が起こされた経験があります。しかし、現代の米国の司法界では水道水フロリデーションは「公共の福祉を優先する事業」として認められ、この問題に関する、いわゆる「個人の自由」は全米どこの裁判所でも認められていません。

 そもそも私たちは社会生活をしている以上、幾多の制約の中で生活しているのが現実です。それが「公共の福祉」に貢献している事になるということを知っているからです。急いでいるとき私たちは、赤信号でも交差点を渡りたいときがあります。夜中で自動車が全然来ないのに、信号が赤だからといってじっと信号が変わるのを待っているのは日本人だけだ、と以前の全日本サッカーを率いたトルシエ監督がいってましたが、これがお互いの福祉と権利を守る方法なのです。
 現在、世界中のほとんどのところで水道水に塩素が添加されています。ご存知のように水系伝染病の予防のためです。しかし、これを嫌う人はたくさんいます。水道水フロリデーションは自然の模倣ですが、塩素消毒はまったく人口的な方法で、最近では取水する水が河川の汚染などで汚れ、より多くの塩素を使用しなければならなくなってきています。においがあったり、金魚などに塩素をなくして使用するなどの注意が必要だからです。
 しかし、塩素消毒は必要なのです。なかには飲み水には湯冷ましを使えばよいという人がいます。しかし、これも蛇口まで一定量の塩素がきているからいえることで、そうでなかったら、湯冷ましを入れる容器をはじめ、調理器からすべての食器にいたるまで、湯冷ましを使用するのでしょうか。明らかに不可能です。経済的になりたたないばかりか、炭酸ガス増加に拍車をかけるばかりか、そもそも市民すべての人々にできることではないのです。
 水道水フロリデーションについても、これを嫌う人の権利も、これによって健康増進を図りたい人の権利もあるわけです。こうした場合、それによってある一部の人の健康を侵害するようなことがあれば論外ですが、水道水フロリデーションはどのような個人にも健康上の障害を与えることはないのです。それどころか、生涯を通じてみれば、むし歯はほとんどすべての人々が罹り、苦痛をあたえ、心身に障害を与え、高齢者のQOLに大きなダメージをあたえている疾病であり、きわめて多額な国民医療費を要する、社会的な、公衆衛生的な対策を講じる必要がある疾患なのです。
ある国際学会の折、日本では学校でのフッ化物洗口に反対する人がいるといいましたら、よその国の研究者のほとんどが怪訝な顔をするのです。フッ化物洗口の反対は日本以外のどの国にも経験がないからです。水道水フロリデーションならいざしらず、フッ化物洗口は選択の自由があるのではないかというのです。日本では、学校でこれを実施するとき、父兄に対する説明会をした後で父兄の同意をとって行なっています。公衆衛生対策として地域保健の一環として行う以上、できるだけ皆さんに参加していただくよう、事前に講演会や説明会を開催して理解を求めるのが普通ですが、基本的には、フッ化物洗口に参加するしないは個人の自由なのです。もうお分かりかと思いますが、フッ化物洗口に参加したくない場合には致し方ありませんが、参加したい人の権利を侵害することは許されないのではないでしょうか。

福岡歯科大学名誉教授  境 脩

 執筆にあたり、多くの成書ならびに文献を参考にしましたが、とくに、学建書院「―21世紀の健康づくりとむし歯予防―わかりやすいフッ素の応用とすすめかた」および口腔保健協会「フッ化物応用と健康―う蝕予防効果と安全性―」から、図表を含め多くを参照させていただきました。


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