印刷する
広場へ > お口の予防とケア > フッ化物

6)水道水フロリデーション(水道水フッ化物濃度調整)

(1)水道水フロリデーションにおける至適濃度

 私達が体に取り入れる飲食物には適量というのがあります。健康維持のために絶対に摂取する必要のある必須栄養素にももちろん適正量が存在します。たとえばビタミンAもDも、また、最近ではビタミンCでさえ過剰摂取による害があることが分かってきました。フッ化物も同様で歯の形成期、永久歯では出生から満8歳までの間に高濃度の飲料水を慢性的に摂取すると、歯のエナメル質が白く濁って見える、歯のフッ素症 (斑状歯) が発生することがあります。歯がつくられるとき、厳密にはエナメル質の形成時だけエナメル質をつくる細胞(エナメル芽細胞)がフッ化物に敏感に反応し、過剰摂取が続くと体のほかの組織には異常が全くみられなくても、歯が白くなる場合があるのです。いわばこの場合、歯のフッ素症は、フッ化物過剰摂取に対するバイオ・マーカーの役目を果たしていることになります。歯のフッ素症の出現程度をみることによって、飲料水からのフッ化物摂取の適否を知ることができるからです。歯が白くなり過ぎてもよくないし、また、むし歯になるのもよくないことから、飲料水フッ化物の至適濃度が決定されているのです。

  このように、むし歯予防のための水道水フロリデーションでの至適濃度は、飲料水からのフッ化物が過剰に摂取されないように、かつ、むし歯予防に十分効果のある丈夫な歯になるように、最適量のフッ化物が摂取できるように設計されています。

 現在世界で実施されている水道水フロリデーションでのフッ化物の至適濃度は国際的に見ると広く温帯地域でほぼ1ppmです。そしてその許容限界濃度は1.5 ppmとされています。

表11 水質基準におけるフッ化物イオン濃度と有効濃度

水質基準

 WHO(世界保健機関)の水質基準

 1.5mg/L(1.5ppm)以下

 わが国の水道水の水質基準

 0.8mg/L(0.8ppm)以下

むし歯予防のための推奨水道水フッ化物濃度

 WHO(世界保健機関)

 0.7〜1.0mg/L(0.7〜1.0ppm)*

 米国公衆衛生局

 0.7〜1.2mg/L(0.7〜1.2ppm)*

*地域の平均気温の差による飲水量の差から、最適な飲料水中のフッ化物イオン濃度には一定の幅がある。 

 表11は、水道水のフッ化物の水質基準とむし歯予防のための推奨フッ化物濃度を表したものです。フッ化物についての水質基準では、WHO (世界保健機関) は1.5ppm以下ですが、わが国の水質基準はその約半分の0.8ppm以下となっています。また、むし歯予防のための推奨フッ化物濃度については、WHOでは0.7〜1.0ppm、米国公衆衛生局では0.7〜1.2ppmとなっていて、地域の平均気温の差による飲水量の差から、最適な飲料水中のフッ化物イオン濃度には一定の幅をもたせてあるのです。これをみるとわが国の水道水の水質基準は、フッ化物によるむし歯予防など健康増進のことは考慮されていないことが分かります。

(2)水道水フロリデーションの安全性

 現在、世界各国で行なわれている水道水フロリデーションに使用するフッ化物は、フッ化ナトリウムやフルオロ珪酸というフッ素化合物で、ホタル石や氷晶石、リン鉱石などの自然の鉱物を原料として生産されています。しかし、いずれのフッ化物を使用するにしても、水道水フロリデーションに使用するときは約1 ppmというきわめて低い濃度ですので、すべてフッ化物イオンになっています。

  水道水フロリデーションが開発された背景には、自然水の飲用経験から、過量のフッ化物を含んだ自然水の飲用で歯が白く濁る、いわゆる歯のフッ素症(斑状歯)が発生すること、フッ化物濃度が低すぎるとむし歯が多発するという事実があるのです。また、水道法では水質基準で消毒のため、上水道の水は蛇口から流出するとき0.1ppm以上の塩素イオンを含むこととなっていて、そのために水源の貯水池において塩素を添加しています。水道水の塩素消毒は必要であり安全です。このように水も自然のままでは安全とはいえないことが分かります。

 また、必須栄養素といわれる物質でも、これらの事情は同じです。たとえば、カルシウムの吸収に必要なビタミンDの必要な量は一日あたり20μg (マイクログラム) 以下であり、もし100μg摂取すると生体にとっては過量であり、危険な量になります。このμgという単位は1000分の1mg、または100万分の1gというきわめて小さな単位です。一方、フッ化物の必要量は一日あたり1mgであり、ビタミンDの50倍の量的レベルにあります。


|| 前のページへ || 次のページへ ||

ページトップへ