制作:日本歯科医師会
- 日本歯科医師会 専務理事
- 歯科医師
- 瀬古口 精良
すべての人に健康と福祉を。
SDGs※1の推進は歯科分野でも
今、世界の先進国が積極的に取り組むSDGs。その保健分野の目標には、「すべての人に健康と福祉を」が掲げられています。我が国でも「医療・介護・健康サービスに対する支援とICT活用、ヘルスケア産業の活性化」などのアクションプランが示されています。
そして「骨太の方針※22022」では、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討」が明記されました。これまでの乳幼児歯科健診、学校歯科健診などはもちろん、成人期、高齢期における歯科健診が加わることとなれば、すべての人の健康を支える一助になることと思います。
日本歯科医師会は、生涯を通じた歯科健診への理解がいっそう深まるよう、「口腔の健康と、全身の健康の関係に関するエビデンスの精緻化」「歯科健診の重要性のさらなる理解」「歯科健診の仕組みの検討」「データの標準化」などへの取り組みを通じて、国民の健康維持・増進に貢献できればと考えています。
※1:「持続可能な開発目標
(Sustainable Development Goals)」のこと。
2015年9月に国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。
※2:政府の経済財政政策の基本方針を定めた文書。
成人の9割以上がむし歯経験者
予防に取り組みリスク低減へ
歯や口腔の健康に対する意識は年々高まっており、子どものむし歯は減少傾向にあります。また、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020(ハチマルニイマル)運動も、当初目標より早く50%以上を達成することができました。
一方で、20歳以上の9割以上がむし歯の罹患経験を有しており、40歳以上の約4割は、「むし歯」が原因で歯を失っています。これは、加齢やオーバーブラッシング、歯周病などにより歯ぐきが下がって露出した歯の根元にできるむし歯(根面う蝕)、歯の詰め物の裏側などにできる「二次う蝕」などが理由のひとつと考えられます。
中でも、根面う蝕を防ぐには、歯ぐきの下がりを予防することが大切です。歯科医院などで、力加減などを含む適切なブラッシング指導を受けて習慣にしましょう。また歯質を強化する「フッ化物(フッ素)」も役立ちます。歯科医院などでフッ化物を歯に塗布してもらうことや、毎日のセルフケアにおいてフッ化物配合のハミガキ剤などを使うことにより、歯にフッ化物を残すことが歯質強化の一助になります。
定期的な受診を心がけ、
ご家族で歯とお口の健康維持を
むし歯予防をはじめとする歯とお口の健康づくりには、歯垢(プラーク)をしっかり落とすことが不可欠です。効果的なセルフケアを実践するためにも、定期的に歯科医院などで診てもらい、一人ひとりに適したケアの方法を確認しておくことが必要です。
その一方で、日頃の歯みがきでは、落としきれない汚れが残ることもあります。それが、むし歯や歯周病による喪失歯の原因になります。最近の研究では、歯周病菌が体内に入ることで、糖尿病や認知症、誤嚥性肺炎などに関係することも分かってきています。
我が国は、いま人生100年時代を迎えようとしています。長く健康でいられるように、そして「食べる」「話す」「笑う」という生活に欠かせない機能を維持できるように、口腔健康管理の重要性はますます高まっていきます。
歯とお口の健康は、病気の重症化を予防し、健康寿命の延伸につながります。定期的に歯科医院などでチェックを受けて、歯とお口の健康を維持しましょう。