制作:日本歯科医師会
- 日本歯科医師会 副会長
- 歯科医師
- 柳川 忠廣




清潔な口腔環境を保つことが、
全身の免疫力や抵抗力の向上に
コロナ禍の今、「口腔健康管理」が感染症対策における有用な手段として注目されています。通常、お口の中では、IgAという抗体による免疫が働いて、歯周病菌などの悪い細菌やウイルスを排除しています。しかし、お口の中を不潔にすると細菌などの敵が増え、IgAによる防衛が難しくなります。つまり、適切な口腔健康管理によって、不潔な口腔環境をつくらないことが、感染症対策に役立つのです。
一方、長引く自粛下での不規則な生活によるう蝕や歯周病の発生・重症化と、それらによる全身の健康状態の悪化が危惧されます。現在、歯科医院などでは、従来からの衛生管理に加えて、さらなる感染予防策を徹底しています。日本歯科医師会が歯科医療機関に対して発行している『みんなで安心マーク』も目安にしながら、感染リスクを懸念することなく、安心して受診してください。
IgAが細菌やウイルスをブロックする仕組み
-
1
細菌やウイルスが侵入する
-
2
IgAがくっつき、粘膜への付着を防ぐ
-
3
唾液によって洗い流される
歯を失う原因にもなる歯周病は、
全身の健康を脅かすことも
歯周病は、歯と歯ぐきのすき間に付着した歯垢(プラーク)の中で歯周病菌が増殖し、歯ぐきや歯を支える歯槽骨などの歯周組織に炎症が起こる病気(細菌感染症)です。国内の30代以上の3人に2人の方が、10代でも約半数の方が罹患しています。症状には段階があって、炎症が歯ぐきだけの「歯肉炎」から、炎症が歯を支える歯槽骨まで広がると「歯周炎」になり、放っておくと歯を失う原因にもなります。また、痛みなどの自覚症状が少なく、気づかないうちに進行してしまうので定期的な健診が必要です。
お口の中で増殖した歯周病菌は体内に入り込むと、心疾患や脳疾患のリスクを高め、糖尿病を悪化させることや、認知症、誤嚥性肺炎など全身の健康を脅かすことが分かっています。そして、妊婦さんの場合は、「早産」や「低体重児出産」も懸念されます。歯やお口の健康は、病気の重症化予防、そして健康寿命の延伸にもつながるのです。
年代別に見る歯周病の患者の割合

最低でも年に2回以上は、
歯科医院などでチェック&ケアを
歯周病は、原因となる歯垢をしっかり落とす歯みがき習慣と、歯科医院などで年に2回以上は定期的なチェックとプロフェッショナルケアを受けて予防に努めることが大切です。
どんなに自分で歯みがきをしても落としきれない汚れがあり、年齢とともにお口の機能もおとろえてきます。定期的な受診こそが、歯周病をはじめとした歯とお口のトラブルの早期発見・早期予防につながります。また、一人ひとりのお口の中の状態に合わせた「ブラッシング」などのセルフケアの方法を指導してもらい、それを実践して、歯周病を予防しましょう。
歯科医院などでは、歯と歯ぐきのすき間の“深さ”をチェックします
-
健康
深さ約2mm以下。歯ぐきは薄いピンク色で引き締まっています。
-
歯肉炎
深さ約2〜3mm。歯ぐきが赤く腫れたり、丸みを帯びてきます。
-
歯周病
深さ約3〜6mm。炎症は骨まで進み、歯ぐきが大きく腫れ、歯がぐらつくことも。