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歯と口に関する故事・熟語

切歯扼腕(せっしやくわん)

 "明眸皓歯"(めいぼうこうし)と同じく、故事成句=故事(大昔にあった事件や由緒ある事柄)を語源とする言葉です。"切歯扼腕"の背景にある物語もまた、『三国志』など中国の歴史書の例に漏れず、血生臭いものでした。


 『史記』によると、秦王(若き始皇帝)暗殺を命ぜられた荊軻(けいか)は、クーデターを目論む秦の将軍・樊於期(はんおき)に計画を相談します。すると樊於期は自分の腕を強く握りしめて(扼腕)、「これこそ わたしが日夜切歯(「歯ぎしり」のこと。前歯の意味ではありません)して、心を砕いてきたところだ」(「切歯扼腕」)と、自ら自分の首を切り落としました。


 荊軻は樊於期の首を土産にして、秦王に近づくことに成功しましたが、結果として失敗に終わったそうです。同義語として"咬牙切歯"(こうがせっし)があります。「咬牙」は「切歯」同様に悔しがって歯ぎしりする、または習慣となった夜の歯ぎしりなどを意味します。


 現在の歯科医学でも「歯ぎしり」の原因として、心理的ストレスが原因の一つとされています。善からぬことを考えず、いらいらせずに平穏な心を保つことが、歯ぎしり防止の一助となるのかもしれませんね。


日本歯科医師会 広報委員会

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