制作:日本歯科医師会

  • 日本歯科医師会 専務理事
    歯科医師
  • 伊藤 智加
キーパーソンが語る。Keyperson message
キーパーソン・メッセージ 伊藤 智加
歯周病予防のために適切な口腔健康管理を。

歯周病予防は、健康寿命の延伸に
つながる重要な健康管理の1つ

歯周病は、歯ぐきや歯槽骨といった歯を支える組織に起こる慢性炎症性疾患です。令和6年歯科疾患実態調査によると、国内では歯肉出血など歯周組織の異常所見を有する者の割合が成人期以降に増加し、中高年層では約半数以上に認められます。“中高年特有の病気”と思われがちですが、若い世代でも歯周病リスクを抱える人が増加していることが近年指摘されています。国は「攻めの予防医療」を掲げており、2027(令和9)年度から健康増進法における歯周病検診の対象年齢が、現行の10歳刻みから5歳刻みに拡充される予定です。
歯周病は「お口の中だけに関わる病気」ではなく、全身の健康に影響を及ぼします。そのメカニズムは大きく2つあります。1つは、歯周病菌や細菌が産生する毒素などが歯ぐきの毛細血管から血流に入り込み、口内の慢性感染巣が全身とつながってしまう状態です。もう1つは、歯周病の炎症物質が血液を介して全身を循環することで、血管障害や免疫バランスの変化などを引き起こし、さまざまな疾患の発症や悪化に関与すると考えられています。
歯周病との関連が指摘されている全身疾患には、糖尿病・心疾患・脳疾患・誤嚥性肺炎や慢性腎臓病、出産時の早産・低体重児出産などがあります。つまり、歯周病予防は「歯を守るため」のみならず、全身の健康寿命を延ばすための重要な健康管理の1つと考えられます。

歯周ポケット(4mm以上)を有する者の割合、年齢階級別(15歳以上)
  • 注:割合(%)は各都道府県の人口規模が反映されるように調整された全国補正値であり、単なる人数比とは異なる。
  • ※出典:厚生労働省「令和6年 歯科疾患実態調査」

歯垢(プラーク)だけでなく、
生活習慣や日頃のクセもリスク因子

歯周病の最大の原因は、歯の表面や歯と歯ぐきの境目に付着する「歯垢(プラーク)」です。歯垢の中には数百種類もの細菌が存在し、その細菌が産生する毒素によって歯ぐきに炎症が起こります。炎症が続くことで歯周組織が徐々に破壊されていきます。
加えて歯周病は、生活習慣や生活環境、全身の状態などが大きく影響する「生活習慣病的な側面をもつ疾患」です。リスク因子が重なることで、発症や進行が加速してしまいます。
例えば、「喫煙」は、歯周病学においてもっとも重要視されているリスクです。このほか、慢性的な睡眠不足や過剰なストレス、不規則な食生活、口呼吸や歯並び・咬み合わせなども、歯周病リスクを高めます。
口呼吸の習慣があると、口腔内が乾燥して唾液のもつ自浄作用が低下し、細菌が増殖しやすくなります。特に睡眠時の口呼吸は見落とされやすいリスク因子です。また、歯並びや咬み合わせが悪いと歯みがきが難しくなり、歯垢が残りやすくなります。睡眠時の口呼吸や適切な咬み合わせは、ご自身で判断するのが難しいところ。心配な方は、早めに歯科医師へ相談してください。

歯周病のリスクファクター
  • ※出典:公益財団法人ライオン歯科衛生研究所

「将来の自分への投資」として
プロケア×セルフケアの継続を

日々の生活や体調にもリスクが潜む歯周病は、どのように予防すればよいのでしょうか?最も大切なのは、「症状がなくても定期的に歯科医院を受診」して、早期発見・早期治療することです。歯周病は、自覚症状が少ないまま進行してしまう疾患です。自分では健康だと思っていても、歯科医院などでチェックして歯周病が見つかるケースは珍しくありません。歯科医院などでのプロフェッショナルケアと、歯科医師や歯科衛生士のアドバイスに基づいたセルフケアの継続。この両輪によるプラークコントロールが、歯周病予防には必須です。
歯周病は、日本人が歯を失う一番の理由になっています。“不具合が起きたら治す”ではなく“今ある健康を守る”という意識こそ大切です。「将来の自分への投資」として、歯周病予防をしっかり続けていきましょう。

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