- 日本歯科医師会 副会長
- 歯科医師
- 林 正純




浸透・定着してきた予防歯科。
成果と共に継続する課題も
ここ10年で「予防歯科」の考え方が広く浸透し、ニーズ自体も高まっていると実感しています。むし歯や歯周病はもちろん、食いしばりや顎関節症、口腔機能低下症などについても、患者さんの側から積極的に受診・相談されることが増えてきました。背景には、健康意識が高まる中、「歯とお口の健康が全身の健康に寄与する」事実が、多くの方に認知され理解されてきたことがあると考えます。
一方で、歯科の定期受診率はまだ改善の余地があります。むし歯や歯周病の早期発見・早期治療の重要性を継続的に、効果的に発信して、かかりつけ歯科医での定期受診をさらに促していきたいと思っています。
歯科検診を受けた人の割合


歯とお口の健康を積極的に守る
知識とケアのアップデートを
改めて「予防歯科」とは、歯科疾患の“治療”ではなく“予防”に重きを置く考え方です。
万一むし歯などになっても、早期発見・早期治療により再発や重症化を防ぐことも含まれます。
疾病予防の概念が日々更新される中、みなさんが予防歯科の実践で必要とされる情報は入手しやすい環境が整いつつあります。例えば、乳幼児期のむし歯予防に必須な各ステージに応じた食育、あるいは成人層のむし歯予防に係る知識も、インターネットなどを通じて得やすくなりました。毎日のオーラルケアに、ハブラシに加えてデンタルフロスや歯間ブラシを活用する方が増えるなど、知ることが行動変容につながることは、昨今の調査からも見て取れます。
みなさんには今後も、歯科医療機関をはじめ各種メディアを活用して、歯とお口の健康を積極的に守るための知識とケアをアップデートし続けていただきたいです。
デンタルフロスや歯間ブラシを使って、
歯と歯の間の清掃をしている者の割合、
性・年齢 階級別


QOL向上や生涯健康のために
ワンランク上の「予防歯科」実践へ
健康は“人からもらうもの“ではなく“自ら作りだしていくもの”です。歯とお口の健康は、全身の健康につながります。加えて、歯とお口の重要な役割である「食べる・話す・笑う」の維持は、QOL(Quality of Life;生活の質)の向上に欠かせないものです。
効率よく健康でいるため、未来の自分が健康で社会活動を存分に満喫している姿を想像すれば、自ずと今、予防歯科に取り組む価値をご理解いただけるでしょう。ぜひ、年2回以上の定期的な歯科受診を習慣にしてください。わたしたち歯科医師や歯科衛生士もしっかりとサポートしていきます。