- 日本歯科医師会 副会長
- 歯科医師
- 藤田 一雄
罹患率が高い歯周病。
加齢に伴う深刻化・若年化が顕著
日本では歯周病の罹患率が非常に高く、40歳以上の約80%が歯周病を抱えています※。加齢に伴い深刻な症状を呈することが増え、70代以降では重度の患者が急増します。一方で、若年層でも30~40%の人が罹患しています。
歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨などの周囲組織が炎症を起こし、進行すると歯を失う可能性がある疾患です。主な原因は歯垢(プラーク)で、これが歯と歯ぐきの間に溜まり適切に除去されないと硬化して歯石となり、炎症を引き起こして歯周組織にダメージを与えます。歯肉炎の段階では治療により回復が可能なものの、歯周炎に進行すると骨や結合組織に炎症が拡大して骨が溶け始め、最終的に歯を失うリスクが高まります。
加えて、歯周病は糖尿病や心臓病、脳卒中などの全身疾患と関連があり、歯周病対策は全身の健康管理にも直結しています。
※厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査」
女性のライフステージと
歯周病リスク
実は、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」が、歯ぐきや歯周組織に与える影響が大きいとされています。思春期にはホルモンの分泌が増加して歯ぐきが腫れやすく、それにより歯垢が付着しやすくなることで歯周病リスクが高まります。また、月経周期や妊娠期にも、ホルモンの変動により歯ぐきの炎症や出血が起こりやすくなります。特に妊娠中は「妊娠性歯肉炎」が発生しやすく、放置すると早産や低体重児出産のリスクも高まります。そして更年期にエストロゲンが減少すると、骨密度の低下や唾液の減少により歯周病が進行しやすくなることが知られています。女性はライフステージに応じてホルモンの影響を受けやすいため、定期的な歯科受診やクリーニングを行い、特に妊娠中や更年期には歯科医師と相談しながら適切な予防策をとることが重要です。
歯周病予防で
生涯にわたる健康的な生活の実現を
歯周病を効果的に予防するためには、定期的な歯科受診、正しいブラッシング習慣とデンタルフロスや歯間ブラシの使用、バランスの取れた食生活、禁煙、ストレス管理、そして口腔ケアに関する知識の習得が不可欠です。これらの習慣を実践することで、歯周病の予防と口腔の健康維持が可能になります。適切な歯とお口のケアを通じて、生涯にわたる健康的な生活を実現しましょう。