Q&A 意見
■Q:フッ化物利用に反対論があります。科学的にはどのように考えられますか。
■A:米国歯科医師会が発行している「フロリデーション・ファクツ2005」(財団法人口腔保健協会 Fluoridation facts 2005)によると、これまでの米国におけるこの60年にわたる水道水フロリデーションの歴史のなかで、これまでにだされた数多くの水道水フロリデーションに対する反対意見が、一般に認められた科学によって実証された試しはこれまで一度もない、とのことです。
次にそれらの反対意見に共通してみられる誤りのいくつかを列記します。
1.不備のあるデータをもとに反対意見が成り立っている。
2.一度否定された内容のことでも、繰り返し意見として発表する。
3.過量な場合や事故などの特殊な場合に起こる危険性を論じる。
4.実際は安全性を証明している論文であっても、その一部だけを引用して危険であるかのような主張をする。
5.癌や毒など、恐怖心を引き起こす言葉を多用する。
6.薬害や公害などと重なるような印象を与えようとする。
7.「絶対安全」など不可能な基準を持ち出して議論する。
この「絶対安全」の証明は、理論的に全く不可能なのです。フッ化物も他のいかなる物質と同様、どのような対象に対しても、どのような時、条件でも、「絶対安全」であることを立証することは理論的にも不可能なのです。一方、有害性は証明が可能です。したがって、「絶対安全」は可能な限り有害かもしれない事項を科学的に否定することによって成り立っているのです。
反対意見の本質について、むし歯が減少することを望まない人、むし歯予防のために自分の仕事が増えることを嫌う人などが、そのことを理由に表立って反対できないため、健康に有害であるとする反対論を引き合いに出して、フッ化物応用の導入を止めようとしている、とする意見もあるくらいです。少なくとも、こと、フッ化物の応用に対する有害論からの反対というのは不思議な現象といわなければならないでしょう。
■Q:歯磨きや甘味制限などの基本になる努力をしないで、薬であるフッ化物に安易に頼るのは正しいむし歯予防とはいえないのではないでしょうか。
■A:まず、むし歯予防の基本ですが、(1)プラーク(歯垢)を除去しフッ化物配合歯磨剤を用いる歯みがき、(2)砂糖摂取をコントロールする甘昧の適正な摂取、(3)歯の再石灰化による歯質強化を目的としたフッ化物応用、これら3つを合わせたものが、むし歯予防の基本です。
しかも、このうちの歯質強化を目的としたフッ化物応用が、科学的に最もむし歯予防効果が立証されている方法であり、学校等をベースとしたフッ化物洗口や地域を対照にした水道水フロリデーション(水道水フッ化物濃度調整)にみられるように公衆衛生特性の最も高い、社会的に見ても重要な方法といえるのです。
■Q:フッ化物応用について学会でも賛否両論があるあいだは、「疑わしきは使用せず」の原則で実施を見合わせるべきである、という意見がありますが。
■A:わが国をはじめ国際的にも学会での学術的な賛否はありません。また、「疑わしきは使用せず」といういい方は、刑事訴訟法の「疑わしきは罰せず」を転用したもので、たんなる語呂合わせであり、原則などというものではないのです。
しかも、現実的な適用には無理があることはすぐに分かります。反対する人が「絶対安全」を求めて議論をすると、「絶対安全」が理論的に立証不可能である以上、すべてが「疑わしき」ことになってしまうからです。むし歯予防のフッ化物応用については、安全性および効果について疑わしいところはありません。
わが国のこの分野の専門学会である日本口腔衛生学会も、2002年、「今後のわが国における望ましいフッ化物応用への学術支援」において、21世紀のわが国における国民の口腔保健の向上を図るため、専門学術団体として、フッ化物局所応用ならびに水道水フロリデーションを推奨するとともに、それらへの学術的支援を行うことを表明しました。
■Q:フッ化物は劇薬であると聞きました。使用しても問題はありませんか。
■A:フッ化ナトリウム粉末の製剤は劇薬に指定されています。これは一定量の製剤中のフッ化物の割合が大きい場合に劇薬指定になるのです。しかし、私たちが実際に使用するフッ化物洗口液は劇薬ではなく普通薬です。
処方どおりに溶解された洗口液(フッ化物イオンとして1 %以下)は、普通薬とされるのです。
わが国では溶液としての洗口剤は製剤として販売されていませんが、日本以外のほとんどの国では洗口液はスーパーマーケットなどで他の商品と一緒に店頭に並べて販売され、一般の方が自由に購入できるようになっています。