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広場へ > お口の病気と治療 > 診断・治療に使われるX線

法的規制

 エックス線(放射線)を誰もが自由に使えるわけではありません。特に患者さんに対しては、医師、歯科医師、診療放射線技師の三つの職業に従事するもののみが行えると法律(診療放射線技師法)で決められています。全て放射線のことを決められた時間以上学習し、危険(生物学的影響)と利点を知っている者です。これらの職能には管理の責任も付帯しています。装置の維持管理、環境の維持管理、そして放射線を扱う個人の健康管理です。大学病院などは毎年監査があり、不充分な場合には改善命令が出される場合がありますが、一般の歯科医院は数が多く、開設者に任されていることも多いようです。これらについて、ここでは概要を簡単にお話します。

  装置にはJIS規格があります。例えば360度全ての方向にエックス線を放出するような装置は、フイルムの大きさ以外の部分は無駄です。ですから絞りの役目のある「照射筒(コーン)」が被ばく軽減のために使われます。この直径も、法的規制の範囲にあります。また、透過力が小さいエックス線は、体の表面に近い部分で吸収されます。このような放射線の成分が多いと被ばくが増加しますので、このような成分を予め除去するために鉛などでできたフィルター(濾過装置)を負荷する必要があり、濾過版の材質や厚さも法律によって規制されています。さらにはタイマーにも規制があります。撮影がうまくいかないことが撮影の途中で分かったら、それ以降のエックス線照射は無駄です。そこで、タイマーは、デッドマン式といわれる指を離したらエックス線の照射も止まるものにしないといけません。どちらかというとこれらはメーカーの問題ではありますが、これらの破損等がなく安全に照射ができるようにしておく必要があるわけです。車を運転する前には、点検が必要であることは法律で決められていますが、これと同じように、始業時の点検が必要なわけです。

  環境の設定及び管理も歯科医院の開設者には必要なものです。エックス線照射装置を入れ、その中でエックス線を出す「エックス線室」は、表示などの義務があります。その中で使うエックス線の量には制限はありませんが、エックス線室の外へと出てくる「漏洩線量」には、厳格な法的規制があります。この法的に定められている線量限度自体をここでは述べませんが、使用時間と相まって、管理をしていくものは厳守しなければいけない基準があると知っておくことは重要です。エックス線室の次の環境を「管理区域」と言います。この範囲は、やはり線量が一定以上になる可能線のある場所の範囲で設定しますが、一般の歯科医院では、エックス線室イコール管理区域と設定してあり、エックス線室の外に漏れてくる線量自体を管理区域外への漏洩線量以下に設定してある場合が多いようです。管理区域の外側には、みだりに人が入り込まないように柵や杭を立て、表示をする義務があります。患者さんの皆さんも「エックス線室」と「管理区域、許可なく立入を禁ず」という両方の表示板を見たことがあると思います。病院(診療所)の境界外は、道路だったり居住区域であったりして、一般の人が自由に往来や出入りする可能性のある環境です。このような環境へはもっと少ないエックス線の漏洩しか許されませんが、これも法律で決められています。しかしながらこの部分は表示の義務はありません。そしてこれらの環境は年数回、実測によりチェックが必要とされているというわけです。これだけ厳重な、放射線取り扱いの環境についての法律が日本では完備しているわけです。

  放射線を扱う人のことを「放射線作業従事者」といいます。これらの人に対しては、被ばく線量のモニタリング、年2回の健康診断など、被ばくが健康に害を及ぼさないように個人管理をする義務があります。一般の歯科医院や病院歯科ではめったにそのようなことはありませんが、事故が生じた場合の報告や、記録の保管の義務などもあり、特定の人に放射線被ばくが集中しないような人事管理なども、放射線に関する危険な作業が必要な事業所などでは必要になってくるわけです。

 患者さん自身の被ばくについては法的な基準はありません。被ばくが多くなりそうだからといってエックス線を使った検査は採用できないようなことが生じるとなると、人命救助に必要な措置が取れない可能性もあります。患者さんの被ばくは、医師(歯科医師)の裁量で医師が考えます。患者さんの被ばくのリスクを上回るようなメリットが放射線を使った検査にあり、患者さん自信が検査によって利益を受けると医師が判断した場合に、患者さんにエックス線写真撮影を提示するわけです。交通事故などで意識がなく、同意の取れない患者さんに対して、医師が人命救助に必要なエックス線撮影を行うことができることはご存知と思います。歯科でも、被ばく量は医科と比べると少量ですが、基本的には同じような考え方をしているわけです。ですから、歯科医師になるためには一定の放射線の知識が必要となり、歯科医師国家試験でも毎年放射線に関する問題が出題されているわけです。厚生労働省では医師や歯科医師の国家試験問題を公表していますので、興味がおありの方は閲覧することも可能です。


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