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歯科エックス線撮影法の色々とその画像

 エックス線は、歯肉、さらに骨や歯など通常は光を通さない物質を透過する作用(物質透過作用)があります。通常の白黒写真は風景などを小さくフイルムに収めるためにレンズで集光する必要性がありますが、エックス線写真は円錐形状に放出されたエックス線の、被写体を透過したものだけを直接フイルムに収集する、いわゆる「影絵の写し取り」です。そのため、被写体よりも大きなフイルムを必要とします。医科の話ですが胸部や骨盤などは最大サイズのフイルムである「半切」と呼ばれる大きなフイルムで撮影します。歯科では、一般的にはそのような大きさは使いません。顎全体を写すものとしては15cm(高さ)×30cm(幅)程度のパノラマフイルム(撮影されたものを図2に示します)、3cm×4cm程度の歯科用フイルム(撮影されたものを図3に示します)が一般的に多用されます。細い部分の撮影や小児に合わせたサイズのフイルム、さらに広い病変を捉えるための歯科用フイルムより大きめのフイルムサイズもあります。これらは患者さんの体や口のサイズ、病変が予測される位置(骨の表面か、歯の根っこの奥か)などにより歯科医師が考えて選んでいます。ちなみに、大き目のフイルムはフイルム料金が少々高くなることにもなります。

 

  パノラマエックス線写真(図2)は、魚拓のようなものです。顎全体で、後ろから前に単純にエックス線を当ててそれを影絵にすると、歯と歯が重なってしまうことは分かると思います。そこで局面状の顎の骨を展開して、平面のフイルムに映す必要があるわけです。展開(パノラミックな観察)して写真に作り上げるために、パノラマエックス線写真と言われるわけです。具体的な撮影の方法としては、歯の表面に墨を塗っておいて、それを体の外に置いたフイルムではがしとることを考えていただければ、おおよその撮影方法の見当が付きます。縦1列に並べた馬簾で墨をはがしていることを想像してください。その部分、すなわち縦に細長い部分だけにエックス線を当てます。そうして顎の端から端までの歯と顎の骨の情報をフイルムに写し取るわけです。幅としては前述のように顎の骨の端から端まで、高さとしては目の下から顎の先端(オトガイ)の下側まで、それを15cm(高さ)×30cm(幅)のフイルムに収めるわけです。

  パノラマエックス線写真では、総覧的な全体像を観察できます。歯科医師は、上あご(上顎:じょうがく)と下あご(下顎:かがく)の骨、そして全部の歯を観察します。歯については、位置、萌出(生えること)方向、生えている部分(歯冠)の形態、骨の中の部分(歯根)の形態、歯根の周囲の骨などを見ます。そして、患者さんの主訴(主な来院理由)の生じた理由を想定するわけです。パノラマ写真の特徴として、全体的に画像がぼやけている点があります。ぼける理由としては増感紙の利用によるボケ、そして撮影時に装置が動く(断層撮影またはスリット撮影と言われています)ことが挙げられます。フイルムを使った歯科用撮影では1mmの間にある20本以上の線が確認できる(20Lp/mm以上の解像力)と言われていますが、このパノラマ撮影ではせいぜい5本程度(5Lp/mm程度の解像力)が限界です。歯の正確な診断が必要になったら、歯科用撮影を追加することになります。ちなみに、このパノラマ撮影装置がない歯科医院では、患者さんの話と歯の外観、歯科医師としての経験などから、主訴の原因を作っている理由を見出すことになります。

  歯が原因で歯科医院を訪れた患者さんの場合、次の段階では、パノラマエックス線写真でざっと診断した歯の精密診断を行うわけですが、そのためには歯科用撮影が必須となります。粗い画像で診断を行わずに、歯についての情報が追加的に必要な場合にこの撮影法は重要です。具体的な撮影方法としては、頬の外側に照射装置を歯に向けて設定し、口の中で歯の裏側に置いたフイルムに、歯の影が写り込むようにするわけです。その際に、歯の形が自然に認められるような画像にするためにいくつかの工夫や方法があるわけです。むし歯(齲蝕:うしょく)の生じやすい部位としては、歯のかむ面(咬合面:こうごうめん)の他に、歯が隣の歯と接する部分(隣接面:りんせつめん)もありますので、その部分がきれいに写り込んでいることも重要ポイントです。図3にそのように写された歯のエックス線写真を例示します。パノラマエックス線写真と比べて細部の描出が良いことを確認してください。

  図4に少々大きなフイルムを軽くかんで前歯の部分を広く捉えた咬合法(こうごうほう)によるエックス線写真の例を示します。大きな骨内病変があった場合の描出がよいことを認識していただければ幸いです。また、図5に、上と下の歯を同時に撮影した咬翼法(こうよくほう)エックス線写真を示します。初期の成人性歯周炎や、初期のむし歯(齲蝕:うしょく)の検出に最も有効であるといわれています。

図6にパノラマエックス線写真の撮影風景、また、図7に歯科用エックス線写真の撮影風景を示します。鉛のエプロンを着用し、体幹部に被ばくが生じないようにすることが理想的と言われていますが、特にパノラマ撮影の際には、鉛のエプロンを用いることで画像が乱される(エプロンの障害陰影が画像上に重なる)ことがあるので、鉛のエプロンの着用は必須ではないと言われています。また、通常の撮影環境では着用しなくても体幹部の被ばくは着用した場合と有意差がないと言われている(Guidelines on Radiology Standard for Primary Dental Care、1994年、日本歯科放射線学会で翻訳したものを入手可能です)ので、鉛エプロンは使わない方が良いという考え方もあるようです。

 

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