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歯周病と肝疾患

2 意外と知られていない歯周炎とNASHの関係

歯周病原細菌、特に慢性歯周炎の主な病原細菌である Porphyromonas gingivalis (P.g.) は歯周炎病巣から血中に入り、全身に波及して、肥満、2型糖尿病や心血管系疾患などの病態を悪化させることが報告されています。アテローム性病変、早産患者の胎盤やアルツハイマー病の脳からP.g.のDNAが検出されています3)。 しかしながら、P.g.歯性感染と NASH の病態進行との関係を明らかにした報告はあまりありません。
Yonedaら4)は、唾液中のP.g.-FimA 線毛遺伝子の検出を行い、P.g.は対照 (21.7%/60例)、NAFL(35.4%/48例)とNASH(50.2%/102例)で検出され、NASH 患者の P.g.口腔感染率が対照群に比べ有意に高いこと、その際、唾液中で検出された P.g.の大部分が FimA-type Ib, type II や type IV といった侵襲性の高い菌種であることを報告しています。我々の行った NASH 患者200例における P.g.-FimA 血清抗体価と患者の臨床病理学的所見の検討においても、P.g.-typeIVの血清抗体価の高い NASH 患者では線維化の進行例が多いことが明らかになりました5)。さらに、NASH 患者の肝組織において、免疫組織化学的に P.g.が検出された症例は線維化がより進行していました6)(図3)。したがって、歯周炎病巣から血流を介して肝臓に感染したP.g.は NASH患者の肝臓の病態を進行させる可能性が高いと考えられます。

図3.NASH患者の肝生検の組織学的解析
肝組織には炎症細胞浸潤(HE染色の矢印)と線維化(Azan-Mallory染色で青色の部分)がみられ、免疫組織化学的にP.g.が検出される(下段茶褐色がP.g.)。P.g.感染症例は肝線維化のスコアが高い。

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