目 次
マウスガードとは / マウスガードが必要なスポーツ / マウスガードの種類と効果 / マウスガードのお手入れ / スポーツ中のお口のけがに対する救急処置 / 食いしばりと筋力
3.どんなスポーツをする時に,マウスガードをつけたらいいのでしょうか?
マウスガードの着用がルールで義務付けられているのは,ボクシング,キックボクシング,アメリカンフットボール,アイスホッケー(ジュニア),インラインホッケー(ジュニア),ラクロス(女子),ラグビー(医歯薬大学リーグ,高校生,他),空手道(極真会館,他),テコンドー(世界テコンドー連盟)などです。これらの競技はいずれも身体と身体が激しくぶつかり合うコンタクトスポーツであり,歯の怪我のリスクが高いことが知られています。その他, K-1 の選手も皆使用していますし,大相撲力士の中にも愛用者がいます。筋肉隆々の屈強なレスラーであっても,歯を鍛え上げることはなかなか難しいからです。
4.野球のボールが当たって,一度歯を折ったことがあります。野球ではマウスガードの着用が義務付けられていませんが,マウスガードをしたほうがいいでしょうか?
歯の怪我には対人事故ばかりでなく,対物事故によるものも多いことが知られています。例えば,日本でも人気のある野球を始めとして,サッカー,バスケットボール,テニスなどの球技スポーツでは,飛んできたボールが,またゴールポストや壁に思わず激突して,あるいは隣にいたプレーヤーが振り回したバットやラケットとぶつかって,歯や顎が折れたり,歯が脱臼(ゆるんでしまう)したりする事故がしばしば報告されています。
こうした球技スポーツでは,マウスガードの着用がルールで義務化されていませんが,安心してスポーツに参加できるように,思いっきりプレーを楽しめるように,マウスガードを装着することをやはりお勧めします。特に小さいお子様を持つ保護者の方々やジュニアの指導育成に関与されているコーチングスタッフの方には,スポーツ・運動の楽しさを教育するとともに,スポーツ安全に関する助言とマウスガード装着の指導を忘れずに行っていただきたいと思います。
どのようなスポーツであれ,歯の怪我をして一度痛い目にあったことがある方には,再発予防のために,マウスガードを装着することをお勧めします。そうでなくても,チームメイトが歯の怪我をした現場に居合わせたことがある,あるいはボールが掠めてヒヤッとした体験がある,など少しでも危険性を感じたことがある場合には,マウスガードを一度試してみてはいかでしょうか?
5.マウスガードには脳震盪の予防効果があるって聞きましたが,本当ですか?
経験的に効果があるのではないかと言われていますが,実は科学的にはまだはっきりしていません。現在のところ,顎から頭部へと伝達される有害衝撃力がマウスガードの持つクッション効果によって緩和されるので,脳震盪の予防につながると説明されています。また,マウスガードをグッとかみしめることで,頸部の筋肉の緊張度がより高まり,首が固定されて,頭部がフラフラしなくなるので,脳震盪が予防できるという仮説もあります。いずれにせよ,今後の解明が待たれるところです。
【参考】
1.スポーツマウスガードハンドブック,医学情報社,東京, 2004 年.