目 次
マウスガードとは / マウスガードが必要なスポーツ / マウスガードの種類と効果 / マウスガードのお手入れ / スポーツ中のお口のけがに対する救急処置 / 食いしばりと筋力
6.マウスガードにも色々な種類があると聞きましたが?
一口にマウスガードといっても,様々なデザインやカラーのものがあり,素材の種類も豊富にあります。大別すると,既製マウスガードとカスタムメイドマウスガードの 2 種類です。
既製マウスガードはスポーツ用品店で売られているものです。海外からの輸入物を中心に,色々なスポーツメーカーから出されています。価格は 1,000 〜 5,000 円程度です。比較的廉価に買い求めることができるので,コストの面から,既製マウスガードを第一選択する方も少なくないようです。安かろう悪かろうではないですが,既製マウスガードを試したスポーツ選手の大多数の者が装着感に不満を覚えるのは事実のようです。結局,マウスガードを持っているだけで,実際に使っていない者が多く存在していることが明らかとなっています。
その点,カスタムメイドマウスガードは,歯科医師(あるいは歯科医師の指示の下に歯科技工士)が,選手一人一人の歯並びやお口の大きさにピッタリ合うように,歯の模型上で精密加工成形するものです。歯のプロフェショナルが丁寧に調整を加えるため,フィット感,快適性,かみ合わせの安定性の点で優れ,運動・スポーツの妨げにならないマウスガードを体験することができます。ただ料金は保険が適用されませんので,私費扱いとなります。差し歯や入れ歯と同じように,カスタムメイドマウスガードも歯型の上で一つ一つ丁寧に作り上げ,入念に調整を加えますので,既製マウスガードに比べて,やはり高価とならざるを得ない事情はご理解いただけると思います。
7.カスタムメイドマウスガードのことを詳しく教えてください。
カスタムメイドマウスガードは,歯科医師が一人ひとりのお口の歯型を精密にとって,お口や歯並びの状態,身体の発育状態,それから参加する競技種目,などの情報から,最適な設計を総合的に診断して,一つ一つ丁寧に作り上げるものです。また装着した後も入念に調整を加えますので,フォローアップも万全といえるでしょう。残念ながら,カスタムメイドマウスガードの調製行為は保険適用の対象外ですので,私費扱いとなります。使用する衝撃吸収材料とデザイン等によって,料金は前後しますが,おおよそ 5,000 〜 20,000 円です。
最新のマウスガード製作技術を駆使すれば,マルチカラーによるオリジナルデザインに仕上げたり,ネームやロゴ,背番号等を組み込んだりすることも可能です。既製のマウスガードでは飽き足らない選手や愛好家の方々には,カスタムメイドマウスガードがうってつけです。自分だけの個性的なオリジナルデザインのマウスガードを歯科医師と一緒に作る。そんな密かな楽しみがカスタムメイドマウスガードにはあるのです。
スポーツ歯科に通じた歯科医師を始めとして,歯科衛生士や歯科技工士などコ・デンタルスタッフ一同は,皆さんのお口の健康管理とよりよいマウスガードの提供管理を通じて,安全で快適なスポーツライフを積極的に支援いたします。
8.既製のマウスガードを購入する際に気をつけるポイントは?
人間の口の大きさや歯並びは一人ひとり違います。したがって,既製のマウスガードを購入する際には,自分の歯型に合った形とサイズのものを選択することが大切です。ただし,洋服や靴の場合とは違って,衛生面の問題から,店頭でマウスガードを試着することはできませんので,パッケージに書かれている説明をよく読んで,サイズを確かめてから,購入するようにしましょう。
キッズやジュニアの場合には,顎の成長と歯の生え変わりに伴って,歯並びやかみ合わせが変化していきます。こうした成長と変化に合わせて,マウスガードにも適宜調整を加える必要があります。もちろんサイズが合わなくなれば,買い替えなければなりません。不適合なマウスガードを長く使い続けることは,かえって正常な顎の発育や歯の生え変わりを妨げる恐れがあります。 2 − 3 カ月に一度は定期的に歯科医院を受診して,歯とマウスガードのチェックを受けるようにしましょう。
9.既製品のマウスガードの調整の仕方を教えてください。
サイズが合っていても,歯にフィットしていない既製マウスガードは,そのままでは緩くて使い物になりません。マウスガードの防護効果を十分に発揮させるためには,歯にしっかりフィットさせて,落ちてこないようにすることが大事です。
実際の手順ですが,まずマウスガードを80 〜 90 度の熱湯につけて適度に軟らかくします。軟らかくなったマウスガードを箸などを使ってお湯から取り出します。取り出したマウスガードが冷めないうちに,すばやく口の中に入れて(火傷にくれぐれも気を付ける),唇の上から指で押さえ,唇をイーと動かしたりして,形を整えます。同時に,マウスガードをかんで歯形をつけて,かみ合わせをしっかり安定させることも大事です。これらの操作でマウスガードの形態修正が上手くいかなかった場合には,もう一度同じ操作を繰り返してみましょう。成形が上手くいったら,マウスガードをお口の中から取り出して,十分にマウスガードを冷ましましょう。冷めてから,口の中に入れてみて,気持ち悪くて吐き気がするところやはみ出したところ,歯ぐきに当たって痛いところなどを鋭利な鋏(はさみ)などで切りとり,修正を加えましょう。
最後に,出来上がったマウスガードを口の中に入れて,歯と歯ぐきにフィットしていて,口を開けても落ちてこないか?マウスガードを噛んだ時にがたつかず,かみ合わせが安定しているか?しばらく着けていて,顎がだるくならないか?呼吸は苦しくないか?お喋りできるか?調べてみましょう。全てに問題がなければ,完成です。
10.既製のマウスガードの調整で気をつける点は?
添付の取扱説明書をよく読んで,調整の手順を十分理解してから,慎重に作業をしましょう。マウスガードの調整作業では,熱湯や鋏(はさみ)を使いますので,作業中の火傷や切傷にはくれぐれも注意しましょう。例えば,熱くなったマウスガードを直接指で触ることは避けて,割り箸などを用いるようにしましょう。また,熱くなったマウスガードを口の中で整形する際にも,しっかりお湯を切ってから,口の中に入れるようにしましょう。それから,鋏(はさみ)を使用する際には,手元が狂って,手指を突き刺したり,切ったりしないように,十分に注意して作業を進めましょう。
小学生以下のお子様の場合には,一人でマウスがードの調整作業を行わせるのは避けて,必ず保護者あるいは指導者が付き添うようにして下さい。
11.既製マウスガードの調整が上手く行きません。どうしたらいいですか?
マウスガードの成形作業は,大人でも意外に難しいものです。鏡の前で,口元を写しながら,自分の手で,手早く仕上げるのですから,無理もありません。調整が上手くできない場合には,無理をせずに,マウスガードの調整作業の経験がある指導者やチームメイトにアドバイスを求めてみましょう。身近にアドバイスを求めることができない時は,スポーツ歯科に心得のある歯科医師にご相談下さい。また,調整中に歯や顎に痛みが生じた場合には,決して我慢せずに,スポーツ歯科に心得のある歯科医師に必ずご相談下さい。