「朝昼晩」はむし歯予防やお口の中のトラブルに関する情報をイラストや写真で分かりやすく紹介するWEBマガジンです

日本歯科医師会 Japan Dental Association

年3回(4月、6月、11月)公開予定  
制作:日本歯科医師会 
協力:パナソニック

知覚過敏を予防する
磨き方を知っていますか

今回のテーマ

『 知覚過敏 』

 アイスクリームやかき氷などの冷たいものを食べたり飲んだりした時に、むし歯はなくても歯がしみたことはありませんか。実は、年齢を重ねるほど知覚過敏になる可能性は高まります。冷たいものも熱いものも美味しく食事を楽しむためにぜひ知っておいてほしい、知覚過敏になるしくみやその予防法。現役の歯科医師がお答えします。

お答えいただくのはこの先生

医学博士

真鍋厚史 先生

MANABE ATSUFUMI
昭和大学歯学部 教授

QUESTION 01

子どもの頃から歯は健康な方ですが、40歳を過ぎて知覚過敏になりました。
原因は何でしょうか?

誰でも加齢によって知覚過敏になる可能性はあります。
間違った歯磨きや酸性の飲食物が原因で起こることが多いです。

知覚過敏の要因はさまざまありますが、ひとつは過度なブラッシングです。歯周病や加齢によって歯ぐきが下がると、エナメル質に覆われていない歯の部分が露出してしまいます。そこを歯ブラシで強くブラッシングしすぎて知覚過敏が起こります。また柑橘系の果物や酢など酸性の飲食物によって、口腔内が酸性に偏ることで歯のエナメル質が溶けてしまい、知覚過敏になることもあります。

歯が健康であっても、実は毎日歯を磨くたびに物理的に力が加わり、エナメル質は少しずつ摩耗しています。だから若い世代より、人生において歯磨きの回数が多い中高年以降の方に知覚過敏のリスクが高くなるのです。歯磨きは必要不可欠なケアですから、知覚過敏になる可能性は誰にでもあるのです。

また、噛みしめや食いしばりなど、上下の歯を接触した状態が続くことも、知覚過敏の原因になります。睡眠時の歯ぎしりだけでなく、日中ストレスなどによって無意識に上下の歯が接触してしまう癖も最近は注目されています。

物理的に、硬いものを噛むなどの衝撃で、歯の表面のエナメル質にヒビが入ってしまいしみているケースもあります。ヒビといっても目には見えないような微細な場合が多いので、気になる方は歯科医院で診てもらうことをお勧めします。ただし知覚過敏は病気ではなく、あくまで知覚過敏“症”です。日頃のケアで防げますので、神経質になりすぎず歯磨きを丁寧に行いましょう。

QUESTION 02

いったん知覚過敏になってしまったら、もう治らないのでしょうか?

適切な歯磨きを続けていれば「第2象牙質ぞうげしつ」という新しい組織が形成され、痛みが改善することがあります。

ご存じの方は少ないかもしれませんが、実は歯には「第2象牙質」と呼ばれる組織があります。常にあるわけではないのですが、一度、知覚過敏になったとしても丁寧に歯磨きを繰り返していると刺激により、象牙質の内側に少しずつ「第2象牙質」ができあがってくるのです。これができれば痛みはおさまります。

第2象牙質を形成する力は若ければ若いほど強く、高齢になるほど衰えていきますが、中年期であれば、まだまだ形成できる可能性はあり、知覚過敏の改善も期待できるでしょう。

QUESTION 03

知覚過敏にならないように、正しい歯の磨き方を教えてください。

歯ブラシだけでなく、デンタルフロスと歯間ブラシを使うこと。
歯間ブラシは、サイズの選び方もポイントです。

知覚過敏になりやすいのは、実は歯と歯のすき間です。だからデンタルフロスと歯間ブラシも必ず使って毎食後、しっかり汚れを取りましょう。まずデンタルフロス、そして歯間ブラシ、最後に歯ブラシの順に、要所から磨いていくのもポイントです。

デンタルフロスとしてフロスピックを使う場合は、途中で汚れたら新しいものと取り替えてください。フロスが汚れたままでは、プラークを取り切れません。

歯間ブラシは、歯と歯ぐきの隙間に対して、少し歯肉に触れるぐらいのサイズがお勧めです。スカスカでは磨きの効果がありません。回数は一度に3~4回往復すればよいでしょう。また奥歯と前歯では隙間のサイズも異なりますので、それぞれにあったサイズの歯間ブラシを揃えましょう。

そして、皆さんが使い慣れている歯ブラシですが、誤った方法で磨くと知覚過敏を誘発しかねない重要なポイントです。よくあるのが、奥歯から犬歯あたりまで一気にゴシゴシと長いストロークで磨くやり方。これは残念ながら間違いです。ストロークは短く。歯1本分か長くても2本分の幅で小刻みに歯ブラシを動かし、柔らかな力で磨きます。

歯間ブラシやデンタルフロスを使っていない方は、やり始めは歯ぐきから血が出るかもしれませんが、気にせずに続けてください。血が出るのはしゅのサイン。歯肉炎の状態です。続ければ歯肉がしまって出血もおさまります。歯肉がしまったら歯と歯の隙間も多少大きくなるでしょうから、またサイズをぴったりの歯間ブラシに変えて続けてください。

QUESTION 04

柑橘系の果物やワインなど酸性の飲食物が好きです。
知覚過敏を防ぐために注意できることはありますか?

口の中を長時間、酸性のままにしなければ大丈夫。
しっかりしゃくして唾液で中和したり、食べ方の工夫でも防ぐことができます。

避けたいのは、口の中が酸性に傾いたまま長時間、経ってしまうこと。赤ワインや柑橘類、酢、炭酸飲料などの酸性の飲食物を食べたとしても、すぐ水でゆすぐと口腔内は中和されます。

お酒の場合は、飲みながらおつまみも一緒に食べれば中和されるので安心です。咀嚼すれば唾液も出るので、より口腔内の環境はよくなります。ただしおつまみ自体が、ドレッシングたっぷりのサラダなど酸性の食品に偏ってないかは注意してください。酸性の食品ばかりなら、途中で水を含むのもよいでしょう。

もうひとつ心がけてほしいのは、両方の奥歯でしっかり噛むこと。なぜなら唾液はしっかり咀嚼している側で、より多く分泌されるからです。たとえば右側ばかりで噛んでいると、右側は唾液の分泌量が多いけれど、反対側はあまり分泌されていません。片側噛みばかりしていると、普段噛んでいない方の奥歯周辺は唾液による浄化が行き届かずプラークが溜まりやすくなり、結果的に知覚過敏にも影響する可能性があります。

また、年齢と共に口は乾燥する傾向があります。口腔内を健康な状態に保つには、常に潤っていることも大切です。喉が渇いていなくても、1時間に1回はお茶や水など、ひと口でもいいから含んで口腔内を潤してあげましょう。

そして予防としてもっともよいのは、むし歯がなくても3ヵ月に1回は歯のクリーニングに歯科医院に通うこと。歯を清潔に保ち、知覚過敏のリスクも減らせますし、万一むし歯などの異常があっても早期発見もできます。美容院に定期的に髪をカットしに行くように、ぜひ歯科医院に通う習慣も身につけてください。

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