「朝昼晩」はむし歯予防やお口の中のトラブルに関する情報をイラストや写真で分かりやすく紹介するWEBマガジンです

日本歯科医師会 Japan Dental Association

年3回(4月、6月、11月)公開予定  
制作:日本歯科医師会 
協力:パナソニック

歯磨きも歯科医院も楽しい!
そんな印象づけが大切です

今回のテーマ

『 子どものオーラルケア 』

 日頃、皆さんが歯やオーラルケアについて疑問に思っていることに、現役の歯科医師が最新の歯科事情の観点からお答えします。第1回のテーマは、乳幼児から小学校低学年のお子さんのオーラルケア。保護者の方からよく寄せられる質問をピックアップしてご紹介します。

お答えいただくのはこの先生

歯学博士

船津敬弘 先生

FUNATSU TAKAHIRO
昭和大学歯学部 教授
昭和大学歯科病院 小児歯科・障がい者歯科

QUESTION 01

子どもが“歯医者嫌い”にならないようにするには、
どうすればいいですか?

とにかくプラスの言葉で。
歯科医院にネガティブなイメージを植え付けないことです。

最初の印象が大切です。「むし歯ができると痛い治療をしないといけなくなるよ」とお子さんに話す保護者の方がいますが、実はこれは逆効果。「歯科医院は怖い」というイメージが定着してしまうから。だから、お子さんにとってはじめての歯科医院の受診は「治療」よりも「健診」がいいでしょう。痛い治療がなく口腔内を見るだけなので怖いという先入観も生まれません。

すでに“歯科医院は怖い”と学習してしまったお子さんにはイメージを払拭する学びなおしの機会をあげてください。小児歯科は子どもの恐怖を取り除く工夫が多くなされています。キャラクターの壁紙など明るい内装や普段着の医師など、病院っぽさを感じさせません。自分と同年代の子どもが泣かずに治療を受ける姿を見るのも大事です。「あの子は大丈夫なんだ」とお子さん自身が実感すると意外に平気になるものです。医院との相性もありますので、どうしても嫌がるなら小児歯科の専門医に診てもらうのもよいと思います。

QUESTION 02

子どものむし歯を自宅でチェックする際の
ポイントを教えてください。

初期むし歯は、歯科医でないと見極められないほどの小さな変化です。

実は保護者の方がお子さんの口腔を覗いて、むし歯だとわかったとしたら、すでにかなり進行した状態。治療の際に麻酔なしでは痛みが我慢できないレベルです。初期のむし歯は、表面のエナメル質のツヤがなくなったり色がほんの少し変色したりと、歯科医師でないとなかなか見分けがつきません。また乳歯は痛みを感じづらいという特徴もあるので、本人が気づくのも難しいでしょう。

初期段階のむし歯なら麻酔を使用しなくても痛みを感じることはまずありません。痛みのない治療なら“歯医者嫌い”になるリスクも軽減します。むし歯のない健康なときから定期的に歯科医院でチェックをうけることをおすすめします。

QUESTION 03

仕上げ磨きは何歳まで必要ですか?
なかなか本人にまかせるのは不安です。

まずは市販の「歯垢染色液」で磨けているかを
チェックしてみましょう。

小学校の低学年くらいまでのお子さんの小さな手では、歯の隅々まで磨けるような歯ブラシの取り扱いはまだまだ難しいです。目安として小学校2年生くらいまでは仕上げ磨きをしてあげてよいでしょう。ある程度ひとりでできるなと思ったら、ドラッグストアなどで購入できる「歯垢染色液」を使ってチェックしてあげてください。

歯磨き後、歯垢染色液でうがいをすれば、磨き残しの部分が赤く染まります。お子さんひとりで磨いたときに染まる部分がないようなら、まかせても大丈夫です。その際も「よく磨けたね」と自信につながるような言葉も、あわせてかけてあげてください。

QUESTION 04

子どもの歯磨きでは、歯磨きペーストは使ったほうが
いいですか? 使わなくてもしっかり磨けますか?

まずは正しい磨き方を身に付けましょう。

うがいのできない低年齢の子どもには、飲み込んでしまう可能性もありますし、ペーストを使用しなくても十分刷掃効果はあります。まずはしっかりとした歯ブラシの当て方や動かし方を身に付けることが大切です。

QUESTION 05

仕上げ磨きの際に子どもを寝かせて磨きますが、
歯磨きペーストのせいか泡立って長く磨けません。
よい方法はありますか?

小児用ジェルタイプなら、歯磨き時の泡立ちが抑えられます。

歯磨剤の味を好んでくれる子どもには、歯磨きを好きになるきっかけとして歯磨剤の使用が有効な場合もあります。仕上げ磨きでは子どもの唾液と歯磨きペーストが混ざり、とても泡立つことがあります。どこを磨いているかがわからなくなったり、子ども自身が泡を出したいために、逆に歯磨きの時間が短くなってしまうこともあります。小児用ジェルタイプの歯磨剤を使用すると、ほとんどの製品は発泡剤が不使用なので歯磨き時の泡立ちが抑えられます。また、うがいができない子ども向けの製品も出ていますので、子どもの状況に合わせて選ぶとよいでしょう。

QUESTION 06

フッ素入り歯磨き粉は効果がありますか?

フッ素には歯の質を強くする効果があります。

フッ素は歯の質を強くする効果がありますからフッ素入りの子ども用歯磨き粉を使用してください。

QUESTION 07

フロスのケアは小さな子どもでも、
やはりした方がいいのでしょうか?

3歳くらいから少しずつフロスの習慣づけを
してあげるとよいでしょう。

乳歯は歯と歯の間に適度な隙間のあることが多く、3歳くらいまでは歯磨きだけでも食べかすなどを落とすことはできます。しかし4歳頃になると、顎の中の6歳臼歯が生える準備のために移動を開始し、乳歯を前へ前へと押すので歯の隙間がなくなっていきます。そのため4歳以降は歯と歯の間にむし歯ができやすくなるのです。

といっても、そうなってからいきなり毎日のフロスのケアを習慣づけるのは大変です。むし歯のリスクが少ない3歳ぐらいから時々フロスを使うようにして、フロスのケア自体に慣れさせてあげるとよいでしょう。

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