歯周病とはどんな病気ですか
ひと言でいうと歯と歯茎のまわりを含めた病気です。歯茎(歯肉)の内部は、見えませんが歯の根元にあるセメント質と歯槽骨とを支えている歯根膜線維からできています(図1)。むし歯と違って歯の形が壊れていくのではなく、歯の周囲を支えている組織が壊れていく病気です。
日本人の55〜64歳代の約50%がこの病気に罹っています。まさに生活習慣病と云われる訳です(図2)。
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| 図1 歯周組織 |
図2 日本人で歯周炎にかかっている人の年齢階級別グラフ [厚生労働省健康政策局歯科衛生課編:平成17年歯科疾患実態調査報告より作図] |
1.歯周病の原因
1)細菌プラーク(バイオフィルム菌と歯周病原細菌)
プラークとは、細菌の塊で1/1000gの中に1億を超える細菌が棲みついています。この細菌の中には善玉の細菌と悪玉の細菌とがあります。
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| 図3 バイオフィルム |
図4 バイオフィルム(プラーク)は歯の2大疾患であるむし歯と歯周病の原因! |
歯面の唾液成分である糖タンパクが薄い皮膜(ペリクル)を作ります。それをベースとして食べ物のなかからショ糖を使ってグリコカリックスというネバネバした物質が自分の家づくりを始め、屋根を作って家全体を覆い始めます。すると細菌たちには、棲みやすい場所ができたわけですから、悪玉の細菌が家の中へ多量に侵入して、増えていきます。これをバイオフィルムプラークと呼んでいます。この悪玉の細菌は、食べ物(栄養)や水も十分で温度も 37 ℃前後という大変よい環境で、悪玉細菌が産生する毒素で歯茎を腫らし、血や膿を出したり、歯の周りの骨を溶かしたりします。このプラークは、外からの抗生剤や唾液中の抗菌成分の攻撃に対して膜を作って薬が効かないようにしています。
2)体の免疫機能(先天的要因)と生活習慣(後天的要因)
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| 図5 歯周病を引き起こす3つの因子 |
微生物因子(歯周病菌)
プラークの中の歯周病の原因となる微生物(細菌)の存在
環境因子
・喫煙
・口腔衛生の不良
・初診時のポケットの深さ
・プラークの付着量
・外傷性咬合
・教育の達成率
・専門医への受診回数など
生体因子
・年齢
・人種
・歯数
・糖尿病
・歯肉滲出液中の物質
・白血球機能
・遺伝
よく歯を磨かなくてもむし歯や歯周病に罹らないヒトがいて、歯を磨かなくても平気と云う人がいますが、この場合でも歯や歯茎は歯周病に感染していますが、歯周病が進行しない状態なのです。その理由は、体には免疫機能があって、顆粒球(好中球を含めて) 65% 、リンパ球 35% 位の割合で異物(感染菌を始め悪玉菌)の侵入に備えています。体調が不良だったり、ストレス、喫煙などの生活習慣が加わるとこのバランスが崩れてきます。顆粒球が増加すると、歯周病は進行して悪化の傾向をたどります。規則正しい生活を行って免疫機能を高め、生活のリズムを崩さないようにすることは生活習慣を守る大切な事の一つです。しかし、リスクファクターと云って先天的に歯周病に罹り易い遺伝子を受け継ぐ場合もあり、自分の体についての情報を知る事も大切です。
3)歯周病と全身との関わり、歯周医学との関連
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| 図6-a 歯周病が引き起こされるしくみ |
図6-b 歯周病と心臓病の関係 |
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| 図6-c 歯周病と脳卒中の関係 |
図6-d 歯周病と糖尿病の関係 |
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| 図6-e 歯周病と肺炎の関係 |
図6-f 歯周病と低体重児出産の関係 |
歯周病は歯周病原細菌とその細菌が産生する内毒素(リポポリサッカライド、 LPS )や炎症性サイトカイン(生理活性物質)が血管を拡げたり、血管透過性を高めたりすることで、好中球の浸潤とともに、心臓血管疾患、糖尿病、呼吸器疾患、低体重児出産などを引き起こす事が分かってきました。歯周病は現在云われているメタボリックシンドロームのなかで、肥満、糖尿病とも関連し、歯周病の予防・治療が緊急の課題となっています。このように歯周病は歯周病原細菌を主原因として、生活習慣による環境因子や体の防御機能因子とも関連する多因子性の相互作用による複雑な病気と云われています。
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