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歯科心身症

歯科心身症の治療法

歯科医師からの説明で「何でもない」ことが分かり、安心してお帰りいただける方も多くいらっしゃいます。しかし、もし心身症であることが判明した場合どのような方法で治療すれば良いのでしょうか。治療の流れを図1に示します。除外診断の結果、歯科心身症であることが疑われる場合、大きく分けて2つの治療法があります。

一つめは心理療法(サイコセラピー)です。心理療法はいわゆる医療のカウンセリングと考えてください。心理療法には、いろいろな方法があり、担当医やカウンセラーにより得意な方法がありますのでそれを行ってもらうことから始まります。

歯科心身症では、症状に対して意識が集中し、いわゆる症状に「とらわれた」状態の方が多くいらっしゃいます(図2)。歯科治療などで強い不安が生じると、その不安が治療した部位に意識を集中させます。意識が集中した部位の感覚は敏感になるため、今まで感じていない感覚が生じます。この感覚に対して、歯科治療をはじめとした何らかの対処行動をとることになります。しかし対処行動をとることで、さらに意識が集中し、感覚が過敏になります。この悪循環にはまると、症状は継続し悪化していきます。

図2 「とらわれ」状態
図2  「とらわれ」状態

「とらわれ」は個々人の考え方のパターンです。このパターンに気付き、パターンを意識して変えていくことが心理療法の働きです。一方では考え方には関係なく、行動のみを変更していく方法もありますが、各症状に適切な方法が選ばれると治療の効果が上がります。

二つめはお薬を使う薬物療法です(図1)。お薬としては、精神に働きかけるお薬を使います(向精神薬と言います)。

精神面に影響があるお薬を使うことに抵抗感がある方や、副作用を恐れ、お薬を使うことに納得されない方もいらっしゃいます。最近、心身症は脳機能の不調から生じていることが判明してきました。このため脳機能に直接影響のあるお薬が、心身症に最も効果をあげることが理解できます。適切に使用すれば効果は著明です。副作用もお薬の使い方に慣れた先生であれば、心配することはありません。実際の診療では、向精神薬に関し、精神科や心療内科にご紹介し、処方をお願いすることもあります。

お薬として漢方薬を使う方法もあります。前述の向精神薬はちょっと・・、という方には、副作用も少なく、効果のある方法です。

心理療法・薬物療法を行い、実際の歯科診療が必要であれば行いますが、できれば心身症の症状がある程度軽減してから行った方が良いでしょう。また、心理療法や向精神薬の専門家である精神科、心療内科にご紹介し、歯科治療と併行して診療していくこともあります(図1)。

治療期間としては1カ月程で変化が現れる方もいますし、半年〜1年以上通院が必要な方もいます。病気で悩んでいる期間が長いほど、「1分1秒でも早く治りたい」と思うものです。しかし焦りは禁物です。治療開始当初、すぐに効果が現れ無いことであきらめないでください。少しでも症状が良くなったところに注目し、逆に悪くなったとしても焦らず、あきらめず、全体では良い方向に向かっていることに気付いていただければ、治りもより早くなります。

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