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歯科心身症

歯科心身症の特徴

歯科の治療対象領域である顔・顎・お口は、知覚神経に富んでいます。口唇やお口の中の粘膜は触覚・痛覚に敏感で、舌はさらに味覚をも感じます。歯も歯の根の周りの神経感覚で、髪の毛一本でも識別できるほど敏感です。この顔・顎・お口の感覚に関連した心身症が歯科領域の心身症の特徴です。ある感覚が過敏になったり、感覚の錯誤(まちがい)が起きるのです。実際には患者さん本人は確かに感じているのに、直接お口の内や外に関連する原因が見つからない状態となります。患者さんは歯・歯ぐき・舌・口唇などに問題があると強く思っていますが、その部位の治療では本来の症状は消退しないのです。

 また、口の中は直接、鏡で観察することができるため、目で見て確認できる歯、歯ぐき、歯並び、舌、粘膜などの形・色と実際の感覚とが一致しないことから生じる心身症もあります。例えば、かみ合わせ感覚と実際のかみ合わせが一致しないこともあり、歯科心身症となることがあります。

このようにお口に関連する器官の感覚に異常が生じ、原因が分からずに治療期間が長期となる方が多く、これが歯科心身症の特徴です。なお、患者さんに現れる症状が多彩で、いろいろなケースがあることも特徴といえます。

歯科心身症の診査・診断

普通の歯科医院でこのような歯科心身症を診てもらえるのでしょうか?「心療歯科」「心身医学」等を医院の特徴としている歯科医院ならば、まずは大丈夫です。大学病院や総合病院の口腔外科でも対応してもらえるでしょう。

診療のはじめは、患者さんがお悩みの訴えについて、丁寧に詳しくお話を伺い、症状の特徴を把握することから始まります。いつから始まって、どのように経過し、どんな症状か、などを詳しく聴くこと(メディカル・インタビュー)が第一です。次に実際お口の中や顎・顔に、症状を引き起こす病気があるかどうかを診断します。診断は「除外診断」が主体になります(図1)。これは、実際にその症状を生じる病気が「ない」ことを診断していく方法です。種々の診査の結果、身体面だけではなく心理面・社会面が強く影響していることがわかれば、心身症が疑われます。

図1 歯科心身症診療の流れ
図1  歯科心身症診療の流れ

これらに心理検査が加わることもあります。これは一般的に精神科やカウンセリングなどで行われている心理面の検査です。最も多い方法は、患者さん自身で自分に最もあてはまる質問に答えていくアンケート方式のものです。(これを心理テストと呼びます)心理検査で心身症が確定される訳ではありませんが、診断の大きな助けになります。また、治療の途中で心理検査を行うことで、心理面に対する治療の効果を計ることもあります。

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