制作:日本歯科医師会


歯とお口に関することって意外と知らないことがありますよね。 最近は感染症も心配です。ちょっと気がかりなことや、今悩んでいることなど歯医者さんに相談したらきっとスッキリ解決するはず!歯医者さんと歯科衛生士さんが、みんなの「なぜ?なに?」にお答えします。
私たちがお答えします!
-
日本歯科医師会
歯科医師 小笠原 浩一
-
ライオン歯科衛生研究所
歯科衛生士 島田 あゆみ
-
-
歯みがきは感染症予防に
役立つってホント?
-
-
お口を清潔に保つことは、
感染症予防にもつながります。お口の中には体に良い細菌と悪い細菌が存在します。歯みがきをおろそかにすると悪い細菌が増え、それが全身の健康のバランスを崩すことにつながるのです。お口の中ではIgAという抗体が細菌やウイルスと戦っていますが、悪い細菌が増えて敵が多くなると、外敵のウイルスから防衛しきれなくなってしまいます。また、お口の中の悪い細菌は、ウイルスが細胞内へ侵入するのを助けてしまったり、体の免疫力を低下させてしまったり、誤嚥性肺炎を引き起こすことにもなります。つまり、不潔な口腔環境をつくらないことが、感染症予防に役立つと言えます。
口腔健康管理について詳しくはこちら
-
-
新しい生活様式にふさわしい
歯みがきのマナーは?
-
-
「3密」を避けるとともに、飛沫の飛散を防ぎましょう。
コロナ禍における職場や学校での歯みがきのマナーとして、次の5項目を守ってください。歯みがき時にお口から飛散する飛沫は意外と多いもの。家族間でも注意しましょう。
- 洗面所や洗面コーナーではソーシャルディスタンスを守り、大勢で利用する場合は時間をずらすなどして3密にならないよう注意する。
- 歯みがき中はおしゃべりを控える。
- 歯みがき中はできるだけお口を閉じて、ハブラシを小刻みに動かす。
- うがいは少量の水で行い、吐き出すときは低い姿勢でゆっくりと。
- 使用後のハブラシはよく洗い、水を切って乾燥させて保管する。
職場などで、食後の歯みがきをきっかけに集団感染(クラスター)が発生したという事例を専門家が調査したところ、断定的に報道された感染源などの内容に誤りがあったことが指摘されています。歯科医院などで適切な歯みがきの仕方を習って、毎食後の歯みがき習慣を継続しましょう。
できるだけお口を閉じてハブラシを小刻みに動かしましょう!
-
- 『歯垢』って、なあに?
-
-
歯の表面などに付着する、「細菌の塊」です。
歯垢(プラーク)は、歯の表面や歯と歯の間などに付着する、生きた細菌の塊です。1mgの歯垢の中には、1~2億個の様々な細菌がいます。それらの細菌が、歯を溶かす酸や病原性物質をつくり、むし歯や歯周病といったお口の病気の原因となるのです。歯垢は、ネバネバしていて水に溶けず、歯に強力に付着しているため、うがいでは除去できませんが、適切な歯みがきで効果的に取り除けます。歯垢が付着しやすく除去しにくいところを意識した歯みがきを心がけましょう。
みがき残しが多いところ
-
- どうして『むし歯』になるの?
-
-
細菌がつくる「酸」によって、
歯が溶かされてしまうからです。むし歯の原因菌として知られる「ミュータンス菌」は、歯の表面などに付着し、糖質を分解して「酸」をつくります。この酸が、歯の表面にあるエナメル質の主成分であるミネラル(カルシウムやリンなど)を溶かしてしまいます。これが「脱灰」というむし歯の始まりで、この状態を「初期むし歯」と言います。そして、その状態がずっと続くと、ついには歯に穴が空いてしまって、いわゆる「むし歯」ができるのです。
間食をしてダラダラ食べたり、糖質を頻繁に摂ったりするなど歯に悪い環境が続くと、次第に歯が溶けて穴が空いてしまいます。 むし歯を予防するためには、毎日の歯みがきでお口を清潔に保つことが大切です。また、「フッ素(フッ化物)」を活用することで、酸に対して抵抗性のある歯質へと強化することもおすすめです。歯のエナメル質のミネラルが溶け出していく
-
-
むし歯になったら
歯を削らないと治せないの?
-
-
「初期むし歯」なら修復が可能です。
歯に穴が空く前の「初期むし歯」なら、歯を削ることなく唾液の働きで修復が可能です。これを「再石灰化」と言います。ただし、穴が空いたむし歯は、削って治療をしなければなりません。
「初期むし歯」を修復するためには、食習慣の改善や、適切なセルフケアを続けることが大切です。 さらに、フッ素を活用することで「菌の働きを弱める」「エナメル質の修復を促す」「歯質を強化して“歯の抵抗力”を高める」といった働きによってむし歯を予防することができます。フッ素配合のハミガキ剤や洗口剤をむし歯の予防に役立てましょう。
初期むし歯は自覚症状がなく、修復には半年~1年程度かかると言われています。少なくとも年に2回は歯科医院などでチェック&ケアを受けるようにしましょう。フッ素の3つの働き