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2020年度 歯と口の健康シンポジウム 感染症とオーラルケア

2020年10月14日、日本歯科医師会主催の「歯と口の健康シンポジウム2020」が開催されました。今年は新型コロナウイルス対策として、オンライン配信での実施になりました。テーマは「感染症とオーラルケア」。新型コロナウイルス対策に関する最新の情報を講演および対談でご紹介いたします。

第1部

講演「感染症と
トータルオーラルケア」

槻木恵一(神奈川歯科大学副学長)

マスクの嫌なにおいは、
唾液が原因

 新型コロナウイルスの影響を受けて新しい生活習慣を考えることが大切になっています。私たちは2月頃からマスク生活を強いられていますが、最近「マスクの中のにおいが気になる」ということが話題になっています。

 このにおいの原因は唾液の減少です。ストレス、脱水、話さない、マスク内で口呼吸をするなどの要素が唾液の減少を引き起こし、口腔内の細菌が増えてしまいます。それがにおいのもとになっているのです。実は唾液はにおいだけでなく、感染予防についても重要な役割を担っています。

唾液量が減少する
4つの原因

 寝起きの口腔内の細菌数は、“便”に含まれる細菌数よりも多いともよく言われますね。夜、寝ている間に唾液の分泌が減り、唾液の自浄作用が働かないため一気に増えてしまうのです。ここには細菌だけでなくウイルスも存在しています。


唾液中の抗菌成分が、
免疫力を高める

 今、感染症を防ぐために、唾液の自浄作用が注目されています。唾液の99.5%は水分ですが、残りの0.5%の中にはさまざまな機能をもつ成分が含まれています。その中でも抗菌作用のあるIgAと呼ばれる抗体は、口腔内の感染予防に重要な役割をはたしています。

IgAは口腔内を
24時間監視する警察官!

 アスリートのIgAと風邪の関係を調べたデータでは、唾液のIgA濃度が減ると風邪を発症しやすいという結果が出ています。IgAは、口腔内に入った感染症などを引き起こす可能性のある異物にくっつき、粘膜に付着するのを防ぐ働きをしています。まさに24時間、口腔内を監視する警察官のような役目です。

 私たちの研究で、高齢の方にヨーグルトを食べてもらい、腸管の免疫力を高めると唾液中のIgAが増えたという結果が出ています。腸と口腔がつながって全身の免疫力を高めることがわかってきたのです。ヨーグルト以外にも納豆などの発酵食品などが効果的です。ただし今日食べて明日効果があるというわけではないので継続が大切です。



インフルエンザにも
影響する歯周病

 歯周病原細菌が生み出す「プロテアーゼ」という成分があります。これはインフルエンザの感染を促進してしまうというデータがあります。しかし要介護者に対して、歯科衛生士によるプロの口腔ケアをおこなうとプロテアーゼは減少し、さらにインフルエンザの発生率が10分の1程度まで減ることがわかりました。ちなみに歯周病は、インフルエンザだけでなく糖尿病、心疾患、関節リウマチ、最近では認知症など、さまざまな全身の病気に影響するといわれています。万病のもとと考えてよいでしょう。

 また抗菌作用をもつIgAは、口腔内の異物が入るとすぐ結びつく特徴があります。口腔内が汚れていると常にフル稼働し、IgAの余裕がなくなってしまいます。肝心な時にIgAにしっかり働いてもらうためには、口腔内が常にキレイであること、丁寧な口腔ケアが重要です。


歯周ポケットが
新型コロナウイルスのリスク因子に

 現在、新型コロナウイルスと口腔の関係について、さまざまな研究がなされています。最近私たちの研究で、舌苔(ぜったい)の中に新型コロナウイルスの侵入に必要な感染促進因子が大量に含まれていることがわかってきました。さらに歯周ポケットには新型コロナウイルスの侵入に必要な物質が共に存在していることもわかっています。つまり歯周ポケットは感染の入り口になりえるのです。

 ただし歯周病は、口腔ケアで十分抑制ができる病気でもあります。感染リスクを下げるためには、まず歯周病にならないようにしっかりケアをおこなうこと。そして今、もし歯周病であれば、それ以上悪化させないことが非常に大切になります。

 具体的なケアとしては、歯磨きと舌磨き、そして唾液のケアの3つです。歯磨きは簡単なようで、歯並びには個人差があり、きちんと磨くのは実は難しいもの。毎日のセルフケアを丁寧におこなうだけでなく、かかりつけの歯科医院などで、プロの口腔ケアを受けることもおすすめします。また歯磨きと舌磨きをおこなうことで唾液力はアップします。ぜひ感染症の基本対策として取り入れてください。


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