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舌小帯 / 上唇小帯 / 頬小帯

舌小帯

 舌小帯とは舌の下面から下顎の歯肉の内側に連続しているひだである。舌小帯の異常は舌小帯強直症が主であり、舌小帯の短縮、あるいは小帯(ひだ)が舌尖から下顎の舌側の歯槽部歯肉まで接近して付着している場合をいう。その程度はさまざまで、多くの場合、小帯によって舌尖部が、下顎正中舌側歯槽基底部の歯肉の辺に種々な程度で固定された状態のものが多い。また小帯の大きさは太く短いものが多いが、普通の大きさのものもみられる。本症は先天性と後天性に分けられ、後天性は舌から口唇における手術や外傷などによって起こる舌の運動が妨げられているものである。本症が先天性に起こる場合の原因については、胎生早期における舌発育過程の残遺像として考えられているが、さらに出生後における舌の発育と舌小帯の退縮との不調和が加わって成立するものと考えられている。

 肉眼的に軽度の舌小帯退縮がみられても、舌を前方に突き出させ下顎前歯部切端を数mm以上超えて、なお舌尖部形態にハート形のくびれが起こらない場合や、大きな開口状態で舌尖部を挙上させて舌尖部が硬口蓋に届く場合、あるいはその他の舌機能障害がなければ大きな問題はないと言える。したがって、舌小帯の短縮がみられる場合には、小帯の状態や、現在の障害の状態、および将来起こりうる障害を考慮した上で治療方針を考える事が大切である。本症の舌運動障害による種々な機能、あるいは器質的障害については、乳児期における授乳障害、下顎切歯による舌下面の潰瘍形成、咀嚼・嚥下障害、下顎義歯の安定や保持の障害、下顎正中の歯間離開、発育障害、特に舌尖部の硬口蓋および歯肉への接触不十分によるサ行・タ行・ラ行音、そして英語の歯茎音に対する構音障害(いわゆる舌足らず)などがあげられる。

 治療法は 一般的には舌小帯に横切開を加え、舌小帯を切離して菱形となった切開創の舌下面と口腔底の部分を縫合する(舌小帯切断伸展術)ことによって舌運動制限を解除する。また切開にZ-plastyを使用してより舌の伸展をはかる方法もある。手術に際しては、舌下小丘の損傷や舌小帯の過剰切離などに注意する。

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