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神経

神経は中枢(脳と脊髄)と末梢(脳神経と脊髄神経)、さらには自動性、反射や調整を行う自律神経があります。脳は大脳・小脳・脳幹(のうかん)、脳幹はさらに中脳、橋(きょう)、延髄(えんずい)に分けられます。機能的には視床(ししょう)を経て大脳皮質(だいのうひしつ)に向かう求心性(きゅうしんせい)と大脳皮質から末端に命令が伝わる遠心性(えんしんせい)、さらに脳幹(副交感性)や神経節(しんけいせつ)[交感性]が関係する自律性(じりつせい)があります。

脳神経

口腔系は脳から出る脳神経系で支配されています。脳の底面で前の方から順に12対あります。それぞれの神経は頭蓋底を貫いて、主に頭頸部、胸部や腹部内臓を支配しています。12の脳神経のうち、歯科領域にとって重要な三叉神経(さんさしんけい)[咀嚼、歯の痛み]、顔面神経(がんめんしんけい)[味覚、唾液の分布]、舌咽神経(ぜついんしんけい)[味覚、唾液の分布]、迷走神経(めいそうしんけい)[内臓、のどの運動、味覚、唾液の分布]があります(図1)

三叉神経

脳神経の中では最大の神経で、知覚と運動の両方の神経線維を含む混合性の神経です。神経節は橋を出て神経は3本(第1枝は眼神経、第2枝は上顎神経、第3枝は下顎神経)で頭部・頸部に広く分布しています。咀嚼運動は食べ物を口に入れた時の歯や口腔から入る感覚情報によりかむ力や速さを変えることができます。上あごと下あごでは神経の分布が違いますが同じ脳神経です。橋には多くの反射の制御装置があり、嚥下や唾液分泌を行います。反射により口が急に開いたり、閉じたりすることがありますが、一般的には歯の痛みは求心性で最終的に大脳皮質(だいのうひしつ)の細胞に到達し処理されます。下あごに分布する神経には遠心性の神経があり、大脳皮質から出た線維が閉口に関与する咀嚼筋や一部の開口筋の運動をコントロールしています。

咀嚼時には咀嚼筋以外に舌や口蓋の筋、さらには嚥下時には舌筋(舌下神経)、口蓋筋[迷走(めいそう) ・舌咽 (ぜついん) ・ 三叉 (さんさ) 神経]に加え、舌骨筋群や咽頭の筋など多くの筋が共同して働くため大脳皮質だけでなく、脳幹や神経節に関係する自律神経(交感神経、副交感神経)も関与する複雑な回路を経て処理されます。その他に舌には味覚受容器があり(舌前2/3は顔面神経、舌前2/3は舌咽神経支配)、特に延髄には中継的な制御装置があり、ここを経由して大脳皮質の味覚野に投射(とうしゃ)されます(図 2〜5 )

日本歯科大学生命歯学部 解剖学第一講座 教授 佐藤 巌

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