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舌の構造

お口の床(下顎底)にあたるところには、舌と呼ばれる筋性の器官が位置します。また硬い食べ物を混ぜ合わせるために舌の表面は4つの舌乳頭と、歯茎と同じ丈夫な角化歯肉で出来ています。舌は主に筋からできています。この筋は2つに大別され、舌の形を変える筋群(内舌筋(ないぜつきん))と舌を前後左右に動かす筋群(外舌筋)からできています(舌下神経支配)。とくに、舌根(ぜっこん)の外舌筋が骨につながっていますが、逆に先端側はどこにもつながっていないために自由に動かし、舌自体の形を自由に変えたりすることができます。
舌は咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)、発声に大きな働きをしますが、味覚や知覚を感じる受容器もあり、胃に入る食べ物を選別する働きもあります。また咀嚼の時には唾液を分泌するのを助け、食べ物に消化液を混ぜ合わせ飲み込みやすい形にする働きがあります。食べ物を口腔から咽頭(いんとう)へと移動するときに舌は口蓋(上あご)を後方に押すことで食べ物を飲み込む動作(嚥下)を促します(口腔相(こうくうそう))。

しかし、嚥下の働きが低下すると、睡眠時に舌筋がゆるみ舌の沈下(咽頭の方に下がる)が起こり、咽頭をふさぐ状態が起こり、呼吸が出来ない無呼吸状態が起こります。これは睡眠時無呼吸症候群(SAS)になり、十分に睡眠がとれず、日中の眠気、集中力、活力に欠ける原因になることにもなります(一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこること)。このため普段から舌を鍛えておく必要があります。

また、無歯顎者(歯がすべて喪失した人)では、舌で口蓋を十分に保持できないため、食べ物を飲み込む際に嚥下困難となることがあります。

さらに、口蓋と舌の位置により発音が決まりますが、歯の喪失が起こると空気の流れが変わり正しい発音が出来なくなることがあり、歯の有無は構音 (こうおん) にも重要です(図 1-a-e )

   

日本歯科大学生命歯学部 解剖学第一講座 教授 佐藤 巌

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