印刷する
広場へ > 全身とのかかわり > 食育

歯科と食育

栄養バランスを考えた旬の素材をどのように口に取り込み、味わい豊かに食べるか、心の和む美味しい食べ方、飲み方などに関する「食べ方」については、食育の大きな柱として明確に位置付けられます。

「食べ方」は乳幼児期、学齢期に口の成長に伴って発達します。この時期のかみ方、飲み方、味わい方などの「食べ方」の機能発達期に本人や家庭への「食べ方」を主とした食育が必要です。食べ物は「口」から食べるのであり、食べる器官の働きとそれに伴う味わいやくつろぎなど食べ物が口に取り込まれてから飲み込まれるまでの食べ方を知識と体験を通して育むことが必要です。食べ物と食べ方の知識と体験があって初めて、食が健全な心身の糧となり、豊かな人間性を育むことができます。

よくかんで食べる習慣を身に付け、それを維持するために、自分の歯で何でもかめるようにしておくことが大切です。そのためには、むし歯や歯周病の予防・治療を心がけ、お口の健康を保つ必要があります。「食育の推進の目標に関する事項」の目標の一つでもある内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の予防に関る肥満や生活習慣病も「早食い」「丸のみ」などの食べ方が大きく関与しています。小児期からの健康づくりに「食べ方」を含めた健康な食習慣づくりの推進と高齢者までの生涯にわたるライフサイクルに応じて健康診断や保健教育を介した「食べ方」の食育の推進が大切です。

ライフサイクルを意識して一人ひとりが豊かで健全な食生活を実践して、心豊かで健康な生涯を送ることができるように歯科関連領域では「食べ方」を主とした食育を積極的に推進する任を担うことが望まれます。

1.歯科からの食育推進宣言

歯科領域における食育推進の基本理念は、平成19年6月に歯科系4団体(日本歯科医師会、日本歯科衛生士会、日本歯科医学会、日本学校歯科医会)により発せられた「食育推進宣言」及び推進宣言の内容を具体的に解説した「歯科関係者のための食育推進支援ガイド」に記載されています。「食育推進宣言」では、歯科領域からの食育は、口から食べることの重要性を食べ方(かむ、味わう、飲み込む等)を通して、その大切さを国民に認識してもらい、口の健康を守り五感で味わえる食べ方ができる食育によって心と身体の健康の保持増進を目指して豊かで健全な食生活を実践してもらうことが示されています。

食育推進宣言

人間は、その長い歴史の中で「食」を単なる生命維持のための「栄養摂取」としてではなく料理として、さらに人と共食することで「心のふれあい」、「食事のマナー」としても発達させてきた。これは食のあり方が文化や文明と深く関わってきたことを意味する。そして今、その食が乱れ、あり方が問われているとすれば、これはとりもなおさず、文化や文明の乱れとして捉えなければならないと、考えている。

国は、近年におけるこのような国民の「食」をめぐる環境の変化に対し、緊要な課題として、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむための食育を推進することによって、現在及び将来にわたる健康で文化的な生活と豊かで活力ある社会の実現に寄与することを目的に「食育基本法」を制定した。

食は命の源である。人は食物を「口」から摂りこみ、十分に咀嚼することによって身体の栄養のみならず五感を通した味わいや寛ぎなどの心の栄養を得る。また、食物の知識と「食べ方」を通して健全な心身の糧となり、豊かな人間性を育むことが可能となる。
以上のような観点にたって、次の食育の支援を行う。

  • 「食べ方」を通して、生涯にわたって安全で快適な食生活を営むことを目的とした食育を推進する。
  • あらゆる場と機会を通して、口の健康を守り五感で味わえる食べ方ができる食育を推進する。

われわれ歯科に関連する総ての職種は、国民すべてが豊かで健全な食生活を営むことができるよう、多くの領域と連携して国民的運動である食育を広く推進することをここに宣言する。

平成19年6月4日 日本歯科医師会 日本歯科医学会
日本学校歯科医会 日本歯科衛生士会

2.歯科保健と食育の在り方に関する検討会

1)噛ミング30(カミングサンマル)の推進

平成21年7月に厚生労働省から出された「歯科保健と食育の在り方に関する検討会」の報告書「歯・口の健康と食育〜噛ミング30(カミングサンマル)」では、食育の今後の方向性が示されています。報告書には、食を通して健康寿命を延伸するためには、その基盤となる小児期から高齢期に至るまで食べる器官である口腔の健康と関連させて健康づくりの視点からの「食育」を推進していくことの重要性が示され、このような食育を推進する一助として、一口30回以上かむことを目標して、噛ミング30(カミングサンマル)の推進が望まれる、としています。

「歯科関係者のための食育推進支援ガイド」と「歯科保健と食育の在り方に関する検討会」の報告書に共通するものは、広く生活に根差した食育を推進するために、食べ方を中心に据えたライフサイクルに応じた食育の推進の展開を提示していることです。国の食育推進計画では第2次食育推進計画によって明確に打ち出されたライフステージに応じた食育の推進について、国に先駆けて提示しています。食べる場である歯・口が年齢とともに形と機能の変化が著しい器官であることを基盤にした食育推進の考えが歯科・口腔保健領域からの食育を推進するのに不可欠であるためで、国が他領域にも必要と考えたものと推察されます。

報告書には、歯科からの食育では食べ方の特徴から以下の3ステージに分けて食育の推進が図られるよう示されています。

  • @食べ方を育てるステージ(乳幼児期・学齢期)の食育
  • A食べ方で健康を維持するステージ(成人期)の食育
  • B食べ方で活力を維持するステージ(高齢期)の食育

歯科関係者が食育の推進に関わる時には、多くはこれらのステージに分け、各ステージの中で食育が推進されることが期待されています。

2)食べ方からの食育の展開の基本

咀しゃく等の食べ方の重要性は、消化吸収を促す栄養面だけに留まりません。これまでの研究によれば、咀しゃく運動は、食物粉砕過程で生じる口腔感覚がフィードバックされることで脳の広い範囲が活動する運動であることが示されています。すなわち、よくかむ運動は、脳の広い範囲を使った運動であり、食べ方の食育の観点からすると脳の発達に重要な意義を持つことが示唆されています。また、「口」から摂取する食品に応じた食べ方(かみ方、味わい方等)を通した拡がりは、@口腔機能への拡がりA生理機能への拡がりB精神機能への拡がりC運動機能への拡がりD安全性への拡がりの5つの機能への拡がりが期待できそれぞれに多くの様態を育むことに寄与しています(図参照)

このような拡がりを意識した「食べ方」の支援を中心に据えた食育を推進する取り組みは、食育基本法の第二条にある「国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成」に資する大きな課題と考えられます。

3.健康づくりのための食育推進共同宣言

日本歯科医師会と日本栄養士会は、「2010年世界保健デー記念 第31回健康づくり提唱のつどい」において「食べることは生きること」の視点からの食育「健康づくりのための食育推進共同宣言」を発表しました。宣言では、歯科医師、管理栄養士、栄養士などの「食」と「健康」の専門職全てが、健全な食生活を実践できる人間を育て、健康で心豊かな食生活を営むことができるように、食育を推進していくことを公表しています。

4.食育ガイドにおける「食べる」

内閣府が作成した「食育ガイド」にある「食べる」の項目は、◇昨日は何を食べたかな◇朝ごはん食べたかな◇こんなことにも気をつけて◇よくかんで味わって!◇みんなで食べたらおいしいね、の5項目で構成されています。食べ方からの食育を推進する立場からはどの項目も大切です。そんな中から、よくかんで味わって!について記載内容を紹介します。

最初の導入に「ひと口何回くらいかんでいますか?」予想と実際の回数を書いてみましょう。ごはん、肉、魚、野菜の分けて予想と実際の回数を記載できる欄があり、それぞれの食品ごとに感想も書き加えられます。その解説では「よくかんで食べるとこんな良いことがあります」あごの発育、むし歯予防、肥満の予防などの記述とイラスト入りで左右側でのかみ方などが示されています。次にライフステージに沿った図にあるような「小さなお子さん(乳幼児)がいる方へ」「よくかん食べることは肥満予防につながります」「高齢者の方や子どもは食べ物による窒息事故にも注意しましょう」などの解説がなされています。

|| 前のページへ || 次のページへ ||

ページトップへ