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キシリトールについて

むし歯予防効果の証明

 むし歯予防効果の最終的な判断は、長期的な臨床研究で証明されなければなりません。そのためには、「なぜ、むし歯の原因となる歯垢や酸を作らないのか」「なぜ、歯の再石灰化を促進するのか」などを明らかにするだけでなく、その材料を使ったグループは使わなかったグループと比較して、むし歯の発生が少なかったことを証明する必要があります。

 多くの長期的な臨床研究で、むし歯予防効果が証明された甘味料は、キシリトールとソルビトールだけです。さらに、ソルビトールよりもキシリトールの方がむし歯予防効果が優れていることも証明されています。

 1975年(昭和50年)に世界で初めて、キシリトールのむし歯予防効果を証明する研究が発表されましたが、1980年代以降は、WHO(世界保健機構)が主宰した研究を始め、日本を含めて多くの研究結果が報告されています。むし歯予防効果を示す数値は各々の研究で異なりますが、キシリトールを使用した場合、30〜80%の確率でむし歯の発生を防いでいます。

なぜ、キシリトールはむし歯を防ぐのか

 キシリトールがむし歯を防ぐ理由は、大きく二つに分けることができます。一つは、キシリトールだけでなく他の糖アルコールも持つ唾液分泌の促進と再石灰化作用であり、もう一つはキシリトールだけが持つ酸を作らないことと、歯垢中の酸の中和促進、ミュータンス菌の代謝の阻害です。

 唾液分泌の促進と再石灰化作用では、糖アルコールには甘みがあるため、口腔内に入れると味覚を刺激し、唾液分泌を促進します。また、ガムとして噛んだ場合には、咀嚼により唾液分泌も促進されます。ただし、唾液分泌が促進されても、唾液そのものにはミュータンス菌の数を減少させる効果はありません。

 また、糖アルコールにより歯垢中のカルシウムレベルが上がるので、歯の再石灰化に役立ちます。さらに、糖アルコールとカルシウムの複合体は歯の硬組織中に進入して再石灰化を促進し、歯を硬くします。

 一方、キシリトールだけが持つ作用ですが、ソルビトールやマルチトールなどの多くの糖アルコールは、少ない量ではありますが、口腔常在菌によって酸を作ります。しかし、キシリトールは口腔常在菌が利用できないため、全く酸を作りません。また、キシリトールには歯垢中に存在するショ糖を分解する酵素(シュクラーゼ)の活性を低下させ、歯垢中で酸ができにくくする作用に加え、アンモニア濃度を上げて酸の中和を促進する働きがあります。ミュータンス菌への影響は非常にユニークで、この作用を理解するとキシリトールを使いやすくなると思います。それについては、次に詳しく述べます。


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