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漢方薬は一人ひとりの自覚症状を大事にして使い分けています。
西洋医学が細菌学の発達により細菌を対象とした予防と治療に専念し、また他覚的所見を重視し精細な検査のデータを基にして病名を重要視するのに対し、漢方医学は人間をグローバルにとらえ、個人の体質を改善して病気を予防しようとする方法(未病を治す)を採り、診療に際しては患者の自覚症状を重んじ、症候をつぶさに観察し「証(しょう)」を決定して治療に直結させる方法を採っています(図2)。いわゆる、最適な漢方薬を使い分けていく、「オーダーメイド」の治療だと言えます。
科学的な研究も進み、漢方薬を使う歯科医師が増えています。
さらに漢方薬は、西洋医学では対処しにくい半健康状態から慢性疾患にいたるまで、広い症状に対処できることが、多くの先生方に認められるようになりました。 このように、広く使われ、科学的な研究も進むようになってきて、漢方薬が今の医療にとって大切な薬であることが、西洋医学からも認められてきています。
現在、多くの医師が日常の診療で医療用漢方製剤の漢方薬を使っており、歯学部の大学病院や総合病院の口腔外科でも漢方薬を用いる歯科医師が増え始めました。
漢方薬は、口腔疾患に適した薬です。
漢方薬は、数千年にわたる効き目や安全性に関する長い経験に基づいて、特有の理論体系を築き上げ、その理論と患者さんの症状に応じて、いくつもの生薬を組み合わせて使うようになっています。そのため、一つの漢方薬でさまざまな症状を治し、複合的な効果を期待することができます。現在、口腔内の疾患に対して具体的には、口内炎、口腔乾燥症、味覚障害、口臭、舌痛症、顎関節症、抜歯後処置、歯周疾患、口腔癌など症状に適した医療用漢方製剤があります。
このように、最近になり歯科医療界では口腔をひとつの臓器として捉え、検査や薬物で対応していく口腔内科的治療が重要になってきました。
参考文献
王 宝禮,王 龍三:今日からあなたも口腔漢方医 - チェアサイドの漢方診療ハンドブック - ,医歯薬出版, 2006
松本歯科大学歯科薬理学講座・大学院口腔内科学 教授 王 宝禮