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目 次

薬効の分類 / 形の分類 / 飲み方

医薬品の分類

医薬品の分類方法には多くの方法があります。よく利用されている「薬効による分類」と「剤形による分類」について述べて見ます。

1.薬効別分類

消炎鎮痛薬、抗菌薬、止血薬、胃腸薬、血圧降下薬など薬効別の分類方法は一般に最もよく使用されています。

(1)消炎鎮痛薬

歯科では最もよく利用されている医薬品の一つで、いわゆる「痛み止め」です。ボルタレン、ロキソニンはじめ多くの痛み止めが使われています。この消炎鎮痛薬は痛みを弱くする作用がありますが、飲めばまったく無痛になるということではありません。症状に合わせて頓服(必要な時にだけ飲む方法)で飲むことが多いのですが、もう少し効き目を欲しいために、ついつい飲みすぎる傾向があります。量を飲みすぎると副作用が増加してくる薬剤です。歯科医師、薬剤師の指示をしっかりと守って飲み、むやみに多く飲まないことが大切です。

(2)抗菌薬(抗生物質)

昔は、抗生物質という名前が使われていましたが、最近は抗菌薬という呼ばれ方が多くなっています。体内で細菌の繁殖を抑えて感染症を治します。多少多く飲んでも副作用が増加するということはありません。さらに中途半端な飲み方は耐性菌を作りやすくするともいわれていますので、飲み忘れしないように最後までしっかりと飲むことが大切です。

(3)止血薬

歯科治療で出血した場合に止血させる目的で使われることがあります。口の中の出血は唾液と混ざってしまうので、よく「大量の出血があった」、「血が止まらない」と訴えるのですが、実際には少量の出血である場合がほとんどです。キチッと脱脂綿やガーゼで圧迫すれば止血することが多いので、最近では使用頻度が低くなっています。

(4)胃腸薬

消炎鎮痛薬の中には胃腸を荒らして潰瘍を起こしやすくするものがあり、胃腸薬を一緒に飲むことがあります。特に胃潰瘍、十二指腸潰瘍を起こしたことのある患者さんに消炎鎮痛薬を飲んでもらうときに使用されることが多いです。

(5)その他

歯科ではこの他に口腔用軟膏剤、口腔内貼付剤、含嗽剤(うがい薬)などが使われますが、これは剤形による分類のところで解説します。

2.剤形による分類

薬物が治療に有効に利用されるためには、最も有用な効果が期待できる形にする必要があります。この医薬品としての形が剤形です。以下に歯科でよく使用される剤形について解説します。

(1)錠剤

現在、最も広く使用されている薬剤の形です。(写真1) 有効成分の薬物は苦かったり、刺激があったりするものが多いのですが、錠剤にすることによって、その味や刺激を避けることができます。持ち運び、保存、服用などの取り扱いが容易で便利です。欠点としては、小児や高齢者で飲み難いと訴える方がいますし、確かに大きいと飲みにくくなります。
錠剤の中には「腸溶錠」といって、胃で崩壊せず、腸で崩壊・溶出するように表皮に特殊加工を施した錠剤があります。この錠剤は飲むときにかみ砕かないようにしなければなりません。

錠剤  

写真1

錠剤:右上の大きい錠剤が裸錠で、左下の小さい錠剤はフィルムで被覆してある錠剤

(2)カプセル剤

カプセルには「硬カプセル」(写真2)と「軟カプセル」(写真3)とがあります。飲み込んだときに食道粘膜などにくっつき易いので、多めの水で飲んで胃まで届かせることが必要です。

硬カプセル剤  

写真2

硬カプセル剤:硬いゼラチンのカプセル


軟カプセル剤  

写真3

軟カプセル剤:内側に油状の薬物を内包する軟かいカプセル

(3)シロップ剤

白糖(砂糖)を加えて甘く飲みやすくした液状の飲み薬です。幼児、小児への投与に適しています。飲む時は、よく振って均一としてから飲むようにします。
「ドライシロップ」(写真4)は、本来は飲む時に水に溶かしてシロップ剤を作るように考えられたものですが、そのまま粉として水と一緒に飲むこともあります。

ドライシロップ  

写真4

ドライシロップ:水に溶解してシロップとしますが、そのまま水と一緒に飲むこともあります

(4)散剤、顆粒剤、細粒剤

いわゆる粉薬には、「散剤」、「顆粒剤」、「細粒剤」があります。小さな粒子(粉末状)にしたものが散剤(写真5)です。顆粒剤(写真6)は、粒子を大きく顆粒状にしたものです。飛散性が少なく流動性があって飲みやすい薬剤です。細粒剤(写真7)は粒子の大きさが散剤と顆粒剤の中間になっています。

散剤  

写真5

散剤:細かい粒子の粉末


顆粒剤  

写真6

顆粒剤:大きな粒子に成形してあります


細粒剤  

写真7

細粒剤:散剤と顆粒剤の中間の大きさの粒子です

(5)注射剤

注射剤は、薬物を溶解、懸濁、乳濁させて皮膚内または皮膚もしくは粘膜を通して体内に直接注入する薬剤です。作用は非常に早く現れて確実なのですが、使用時には針を刺されるので痛みを伴います。アンプル(写真8)やバイアル(写真9)に充填されています。

注射薬  

写真8

注射薬:アンプルに入った注射薬


注射薬  

写真9

注射薬:バイアルに入った注射薬

(6)軟膏剤、クリーム剤

軟膏剤は、皮膚や粘膜に塗布できる適当な軟かさをもつ半固形の塗り薬です。クリーム剤は、油と水とが乳化して半固形になっている軟膏基剤(乳剤性基剤)に薬物を混和させてあります。
軟膏の治療効果は含まれる薬物だけでなく、軟膏基剤の種類によって大きく異なってきます。大きく分けて疎水性基剤(ワセリンなど)と親水性基剤(乳剤性基剤など)に分けられます。
歯科では「口腔用軟膏剤」(写真10)がよく使用されます。口の中は唾液で濡れていますので、唾液で流れないように疎水性基剤にさらに粘膜付着性を高める物質を加えるなどの工夫がされています。口腔用軟膏剤を塗布する部位はしっかりと清掃してから塗布することが大切です。

口腔用軟膏剤  

写真10

口腔用軟膏剤:口腔内に塗布するための軟膏剤

(7)歯科用貼付剤

口腔粘膜に貼り付ける錠剤やシール(写真11)を歯科用貼付剤と呼びます。口内炎などによる潰瘍面を保護します。歯科用貼付剤を貼り付ける粘膜部位はしっかりと清掃してから貼付することが大切です。

歯科用貼付剤  

写真11

歯科用貼付剤:シール状のフィルムを口内炎の潰瘍面の上に貼り付けます

(8)トローチ剤

口中で徐々に溶解または崩壊させて、口腔粘膜・咽頭粘膜などに持続的に作用させることを目的としている大型の錠剤様の形状をしている薬剤です。(写真12)口中で徐々に溶解・崩壊させる薬剤なので、トローチ剤はかみ砕かずに、ゆっくりしゃぶって使用する必要があります。

トローチ剤  

写真12

トローチ剤:右上が穴開きトローチ、左下が穴なしトローチ

(9)含嗽剤、洗口剤

含嗽剤は「うがい薬」(写真13)のことです。口中や咽喉頭を消毒し、清潔にするために上を向いてガラガラとうがいする場合に使用します。洗口剤は歯牙や口腔内粘膜を清潔にするために口に含んでクチュクチュと洗口する場合に使用します。洗口剤は街の薬局で市販されているものが多いです。

含嗽剤  

写真13

含嗽剤:使用時に水で薄めてうがいをします

(10)坐薬(坐剤)

坐薬は薬物に適当な基剤を加えて混和し、一定の形状に成形したもので、肛門などに挿入する固形の外用剤(写真14)です。坐薬は体温によって軟化溶解したり、分泌液で徐々に溶けることにより薬物を放出するように工夫されています。直腸などで放出された薬物が放出された局所で効力を発揮する坐剤もありますが、多くは放出された薬物が直腸粘膜から吸収され、血中に移行し、全身的な薬効を発揮することを期待した坐剤です。解熱鎮痛薬が全身作用を期待して坐剤に広く用いられています。体温程度の温度で溶解する坐剤は冷所に保存しますが、最近は室温で保存できる坐剤が多くなってきています。

坐薬  

写真14

坐薬:尖った先端から肛門へ挿入してしばらく指でおさえます


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