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妊娠時の歯やお口のケア

「赤ちゃんのせいでカルシウムが歯から溶け出す」ことや「赤ちゃんを産むと歯を失う」なんてことはありません。健康な赤ちゃんを産み,赤ちゃんに丈夫な歯が生えるようにするためには,妊娠中のお母さんはどのようなことに気をつければよいのでしょうか?

1。妊娠中に気をつけたいお口のこと

1)規則正しくバランスのよい食事を心がけましょう

おなかの赤ちゃんは,お母さんが食べたものを栄養にして育ちます。体重の増えすぎや食事の控えすぎにも気をつけながら,規則正しくバランスの取れた食事を楽しくとることが大切です。この規則正しい食習慣は生まれてくる子どもの食習慣の形成にもつながります。

2)赤ちゃんの歯について

子どもの歯が生え始めるのは生後6〜8カ月ごろですが,赤ちゃんの歯のもとになる芽(歯胚)ができるのは妊娠7週目ごろからです。妊娠 10 週目ごろになると全ての乳歯の芽ができ始めます。この歯の芽が妊娠4〜5カ月から少しずつ硬い組織になり歯の形を作っていきます。また,一部の永久歯の芽もお母さんのおなかの中にいるうちから作られ始めます。バランスの取れた食事を心がけるようにしましょう。

3)むし歯の原因となるミュータンス菌について

健康な状態でも,口の中にはたくさんの細菌がいます。むし歯を作る菌の中で代表的なものは「ミュータンス菌」で,この菌は歯にくっついて増える性質を持っています。

ミュータンス菌の増え方

1. 生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはミュータンス菌はいません。

2. やがて,周囲の人の口の中にいたミュータンス菌が唾液などを介して,赤ちゃんの口の中に入ってきます。

3. それでも,歯が生えていないうちはミュータンス菌が住みつくことはありません。

4. 歯が生えてきて,いろいろなものを食べるようになると,ミュータンス菌はさっそく住みつきます。授乳や食事の後はガーゼや歯ブラシなどで歯をきれいにしましょう。

口の中の細菌を完全になくすことは難しいのですが,お母さんをはじめとした周囲の人が口の中を清潔にしてミュータンス菌を減らしておくことは大切です。

4)妊娠期に見られる口の中の異常

1.妊娠性エプーリス

歯肉にできる球形あるいは円形の良性のできもののことです。ほとんどの場合は出産後に自然に消えます。治らない時は歯科を受診して下さい。

2.口内炎や口角びらん

ビタミンやミネラルなどの不足により,口内炎や口唇の端のただれができやすくなります。予防のために栄養バランスのよい食生活を心がけましょう。

2。妊娠中のお口のケア

1)。妊娠期のお口の問題

【症状と原因】

・食生活が不規則になる。

・酸性の食品(すっぱいもの)が増える。

・つわりにより吐いたものに含まれる胃酸が口の中に残りやすい。

・ホルモン分泌の変化によってだ液が酸性に傾き,ネバネバしてくる。

・歯ブラシを口に入れるだけで気持ちが悪くなることが多く,歯磨きができない。(口の中に食べかすが残りやすくなる。)

・妊娠によってホルモン分泌が変化し,歯肉は炎症を起こしやすくなる。

妊娠中はむし歯や歯肉炎になりやすい環境がそろいやすくなる。

【対策】

1. 妊娠に気づいた時から,口の中がむし歯や歯肉炎などにかかりやすい環境になっていることを自覚して,ふだん以上に気をつけることが大切です。

2. 歯磨きができない時はぶくぶくうがいをしましょう。
だらだらと甘いものなどを食べることは控え,何か食べたあとはすぐ口をゆすいで,食べかすなどが口の中に残らないように気をつけましょう。

3. 比較的気分のよい時間帯に丁寧に歯磨きをしましょう。(ヘッドの小さなブラシに変えると磨きやすくなることもあります。)

2)妊(産)婦健診

妊娠中はむし歯や歯周病になりやすくなっている上に,これらの初期の病状にはなかなか自分で気づきにくいものです。つわりがおさまり,4〜6カ月頃の安定期に歯科健診を受けましょう。

3)妊(産)婦の歯科治療

【時期】
原則的に歯科治療を受けて悪い時期というものはありません。ただし、つわり・流産・早産の危険性を考えると、安定期が望ましいでしょう。赤ちゃんが生まれると通院するのも大変なので,治療の必要があるのなら,妊娠中にすませておきましょう。

【受診時の注意点】
母子健康手帳を提示して,産婦人科医から注意を受けていることはどんなことでも必ず歯科医師に伝えましょう。楽な姿勢で治療を受け,体調・気分が悪くなった時は遠慮なく申し出ましょう。

【影響】

1. エックス線について

歯科治療で使われるエックス線の放射線量はごくわずかですし,腹部から離れているので,お腹の赤ちゃんにほとんど影響はありませんが,妊娠していることを伝えましょう。

2. 歯科治療時の麻酔について

歯科治療において用いる麻酔は局所麻酔で,使う量もわずかなので通常は問題ありません。疼痛によるストレスを考えると、安定期には適切に使用した方がよいと思われます。

3. くすりについて

妊娠に気づかないで薬を飲んでいたとしても,多くの場合,心配するほどのことではありません。あまり悩まないで,念のため主治医か産婦人科医に相談なさってください。

処方薬の場合は歯科医師が適切な使用時期,使用量,使用期間を十分考慮し,妊娠中や授乳中でも安全に使用できる抗生物質,炎症を抑える消炎鎮痛剤を処方して用います。

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