11月公開予定 発行:日本歯科医師会 協力:サンスター
「形態は機能に従う」―。これは建築家ルイス・サリヴァンの言葉です。美しい建物を建てるには、その構成要素の屋根、壁、床それぞれの細部は必然性を持たなければいけないそうです。この言葉はそのまま人間の歯列形成にも当てはまります。口腔機能とは咀嚼、嚥下、呼吸、発音など日常生活で必要なもので、これらが歯列を形作っていきます。口腔機能と歯列には密接な関係があり、日常における正常な口腔機能は正常な歯列を形作ります。
頬や唇、舌、噛む力が適切であれば歯列は正常に並んでくれますが、口の機能および口腔悪習癖、喉や鼻に疾患を抱えていると歯並びに問題が生じます。
乳歯のむし歯を放置して穴が空いたり、早期に歯を失ったりすると、歯並びに悪影響を及ぼします。乳歯には、永久歯が正しい位置に生えてくるためのガイドとして、永久歯のためのスペースの確保の役割がありますが、生え変わりの時期よりも早く抜けてしまうと、歯並びが悪くなる可能性があります。
通常、舌の先は上の前歯の後ろの硬口蓋に接触しています。鼻の疾患等で口呼吸が習慣になっている人は、舌の位置が下がっていて下あごの歯列のアーチの中に収まることが多いです。顎や歯並びは、そもそも舌が適切な位置にあって、唇や頬からの圧力がかかることで正常な形態に発達していきますが、口呼吸だと舌の位置が下がりやすいので上顎が発達しにくくなります。これが歯並びにも影響を及ぼし、出っ歯「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」や、歯がバラバラの方向に生える「叢生(そうせい)」の原因になることがあります。また、舌の位置が下がることで舌を前歯の方向に突き出しやすくなり、上下の前歯の間にすき間が生じる「開咬(かいこう)」を引き起こすこともあります。
指しゃぶりは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時から始まっています。これはお母さんのおっぱいを吸うための訓練です。しかし、3歳を超えても指しゃぶりやおしゃぶりの使用が継続している場合は、注意が必要です。歯や顎の発育が活発な時期でもあるため、開口や上顎前突の原因になることがあります。
舌の異常な動きを舌癖と言い、代表的なものに以下が挙げられます。
異常の兆候を見逃さなければ多くの歯列不正は防ぐことができます。歯列不正は見た目はもちろん、その影響が全身に及ぶこともあります。かかりつけ歯科医と二人三脚で早期改善を図りましょう。