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歯の幹細胞の魅力

歯科治療では、やむを得ず抜歯することが多くあります。20歳を過ぎた大人の患者さんの場合、親知らずをはじめ抜歯する歯の多くは、歯根の先まで形成された完成歯となります(図2)。一方、10歳代の若年者においては、歯が完成する前の状態で抜歯することが少なくありません。すると、途中までしか形成されていない歯根の先にある歯髄(歯乳頭)(図3)や、歯の外側に付着している軟組織である歯小のう(図3)が抜去歯と一緒に採取されます。

これまでに、脱落した乳歯の歯髄も含めると、以下に示す5種類の歯の幹細胞が知られています。

1.歯の幹細胞の種類

(1)歯髄幹細胞

完成歯の中にある歯の神経(歯髄)から得られる幹細胞。

(2)歯根膜幹細胞

完成歯の歯根の周りに付着している歯根膜から得られる幹細胞。

(3)歯小のう幹細胞

未完成歯の周りに付着している軟組織から得られる幹細胞。

(4)歯乳頭幹細胞

未完成歯の形成途上の歯根先端に見られる歯髄から得られる幹細胞。

(5)乳歯幹細胞

幼児の脱落した乳歯の歯髄から得られる幹細胞。

2.歯の幹細胞の魅力

これら歯の幹細胞が、どれほどの能力を持っているのでしょうか?この点に関して、親知らずの幹細胞について研究した最近の面白い報告があります。

前述した通り、医学部において以前から再生医療の期待が高かったのは、骨髄幹細胞です。そこで、歯の幹細胞の能力を検証するため、この骨髄幹細胞を比較対象にして行われた研究です。

(1)活発な増殖能

図4に示すように、親知らずから得られる4種類の幹細胞は、骨髄幹細胞よりもはるかに早く増えることが、両者を培養することで明らかとなりました。

どんなに能力が高い幹細胞であっても、培養して数が増えてくれないことには、治療に十分な細胞を移植することはできません。この歯の幹細胞が持つ高い増殖能力は、治療に用いる幹細胞を培養で大量に増やせることが示されたため、骨髄幹細胞よりも再生医療に有利な能力を有することが分かりました。

(2)多彩な分化能

活発に細胞が増えたとしても、幹細胞としての性能が悪ければ、これも話になりません。そこで幹細胞の性能を評価する基準として知られる、多分化能について検証が行われました。

図5に示すように、歯の幹細胞の4種類のいずれの細胞においても、培養条件を変えることによって骨、脂肪、神経の複数の細胞に分化することが示されました。したがって、歯の幹細胞は、骨髄幹細胞と同等の多分化能を有することが分かったのです。

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