「朝昼晩」はむし歯予防やお口の中のトラブルに関する情報をイラストや写真で分かりやすく紹介するWEBマガジンです

日本歯科医師会 Japan Dental Association

年3回(4月、6月、11月)公開予定  
制作:日本歯科医師会 
協力:パナソニック

2020年度 歯と口の健康シンポジウム

日本歯科医師会主催の「歯と口の健康シンポジウム2022」が10月12日、「『国民皆歯科健診』で注目の集まる 歯周病と全身疾患~女性ならではの疾患も!女性と歯周病の関係~」をテーマに、オンライン配信で行われました。第1部では、大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 予防歯科学教授の天野敦雄氏が基調講演を行いました。第2部では、天野氏とフリーアナウンサーの政井マヤ氏による対談が行われました。その模様をご紹介します。

第2部

対談歯周病にならないために必要なケア
My歯科医師・歯科衛生士を
持とう!

天野敦雄(大阪大学大学院歯学研究科
口腔分子免疫制御学講座 予防歯科学教授)

政井マヤ(フリーアナウンサー)

左から司会者、天野先生、政井さん


妊娠に真っ先に気づいたMy歯科医師

司会
政井さん、基調講演をお聞きになった感想はいかがでしょうか。
政井
歯周病は高齢のイメージでしたが、妊娠期も危険性があったんだと発見がありました。実は、私の第2子の妊娠に最初に気づいたのは、かかりつけの歯科医院の先生なんです。歯ぐきの腫れなどの変化で分かったそうなんですが、驚きましたね。
天野
妊娠すると一気にホルモンが増え、赤ちゃんとお母さんの身体を守るために免疫が活性して炎症が起こります。そうして、次第に歯ぐきが腫れていくんですね。かかりつけの先生は政井さんのお口をずっと診ているから、その変化に気がついたんだと思います。
司会
女性ならではと言えば、妊娠だけでなく更年期も気になります。歯で注意すべきポイントはどのようなものがありますか。
政井
私もまさに更年期なので、ぜひ伺いたいです。
天野
更年期はもちろんライフステージのすべてにおいて歯の不調の原因はプラーク(歯垢)です。だから常にプラークを少ない状態に保つことが大切です。女性はホルモンバランスによって生涯に亘り、さまざまなリスクにさらされるので、まずはご自分で歯間ブラシなども併用してしっかり磨く。ただ歯磨きは上手な方でも歯ブラシだけでは6割のプラークしか除去できていないと言われていますので、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアで100%歯垢を取り除くことが非常に重要なポイントになります。
政井
必ず歯医者さんや歯科衛生士さんと一緒に二人三脚で、お口の健康を守るのが大切なんですね。
天野
そうです。お気に入りの美容院があるように、お気に入りの歯科医院を見つけてほしいですね。
司会
仮に歯周病が進んで、歯を失うとどうなりますか。
天野
歯を失うと、全身に悪影響を及ぼします。重要なのは「食べることは、生きること」なんです。例えば、高齢になると身体にとってはよりタンパク質の摂取が必要ですが、歯を失うと肉や魚を食べるのが億劫になります。ついつい柔らかいものを選び、結果的にご飯やうどんなど炭水化物に偏ってしまいます。栄養が偏ると身体も心も弱り、さらに噛んだり、話したりするための口腔機能が衰える「オーラルフレイル」と呼ばれる状態になり、食べる力が弱くなるだけでなく社会性までも低下してしまいます。お口の健康は、心身の健康を守る重要な要素なんですね。

フッ素(フッ化物)は、
最強のむし歯予防対策

司会
政井さんは、普段どのようなケアをされていますか?
政井
10年程前からフロスと仕上げの洗口液を習慣化しています。キレイに磨いたつもりでも、歯周ポケットの検査なども含め、歯科医院で磨き残しを指摘されて不安に感じることもありました。でも、最近はMy歯科衛生士と出会い、定期的に歯と口の健康をチェックしてくださる方がいることが大きな安心につながっています。ところで、フロスは、歯ブラシの前にした方が良いと聞いたのですが。
天野
そうですね。最初にフロスや歯間ブラシで歯と歯のすき間についた汚れなどをとってから歯ブラシで磨き、洗口液で仕上げるのがベストです。洗口液には薬効成分がありますので、しっかり磨いたつもりでも磨き残しているであろうプラークに効きます。
政井
私は3人子どもがいます。子どもたちにはいつ頃からフロスを取り入れるのがよいでしょうか。
天野
お子さんのむし歯は、噛み合わせの部分と歯と歯の間にできやすいという傾向があります。乳歯が生えそろったら、ちょうどフロスを取り入れるよいタイミングです。使い方が難しければ、ホルダー付きのフロスがよいですね。ご自身がむし歯になりやすいタイプだと思ったら、お子さんにもフロスを励行していただくとよいでしょう。
司会
歯磨き剤に入っているフッ素(フッ化物)とは、どのような効果があるのですか。
天野
現在フッ素はむし歯予防策として、最強の物質といわれています。実はブラッシングよりも効果があるというデータもあります。フッ素入りの歯磨き剤はぜひ使っていただきたいですね。
そして、舌も磨いてほしいですね。舌の奥の方が茶色や白くなっている人はバクテリアや菌が潜んでいる可能性があります。舌の表面には味を感じるレセプター(受容体)があるので、舌がキレイになると味覚もアップしますよ。
政井
舌は歯ブラシでしてもよいのですか。専用のものでないとダメでしょうか。
天野
舌の表面は傷つきやすいので、できれば舌ブラシでやさしく掃除してください。ポイントは軽く、力を入れすぎないことですね。ちなみに、しっかり咀嚼して唾液を出すことでも、味覚のレセプターを刺激できます。よく噛めば、食事をより一層美味しく味わえますよ。

歯周病は、若いほど進行が速い!

司会
歯周病の進行のスピードは、年齢によって差はありますか。
天野
実は若いほど速いんです。歯周病菌が歯ぐきに炎症を起こす場合もあれば、炎症によって過剰に免疫が働いて骨が痩せていく場合もあります。35歳ぐらいで罹患した歯周病の場合、進行が速く重症化するリスクが高いんです。高齢になってから発症したものは進行が遅く、重症化しにくい傾向があります。
政井
歯周病は若いうちは、あまり縁はないのかと思っていたので意外です。
司会
歯周病はなかなか気がつきにくいというお話でしたが、予防のためにまず私たちができることは何があるでしょうか。
天野
自己流になっている恐れがありますので、セルフケアの指導を、ぜひ一度、プロである歯医者さんや歯科衛生士さんから受けてみてください。どこに磨き残しが多いか、ご自身の磨き癖、歯ブラシは自分に合っているかなどもチェックしてもらえます。定期的にプロフェッショナルケアを受けてほしいですね。皆さん、髪は美容院でプロに散髪してもらいますよね。それと同じ感覚で、歯もプロのケアを受けることをおすすめします。
司会
政井さん、今日はいかがでしたか。
政井
自分でも歯に関する情報を調べているつもりでしたが、「そうだったんだ」「勘違いしていた」と思うところもあり、重要な情報をたくさん知りました。自分自身、セルフケア、プロフェッショナルケアをより一層心がけ、子どもたちにも歯の健康の大切さをしっかり伝えていきたいと思いましたね。ありがとうございました。
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