広場へ > 歯科とライフステージ > 歯科治療の麻酔

3)精神鎮静法

 麻酔注射の痛み、歯を削る際の振動、音、長時間の開口、器械が口に入ることなどに対して不安や恐怖感を持つ人は少なくありません。こうした不快事項が高じると患者さんによっては歯科治療を避けたり、受けなかったりすることがあります。歯科治療への恐怖、不安、を和らげて気分良く治療を受けられるようにする方法が精神鎮静法です。精神鎮静法は少量の精神安定薬や麻酔薬を投与して気分をリラックスさせて治療中の不快事項を忘れさせてくれ、快適な歯科治療を受けることができます。精神鎮静法は全身麻酔とは異なり、意識をなくしたり、痛みを除去したりする麻酔法ではありません。精神鎮静法には次のものがあります。

・亜酸化窒素(笑気)吸入鎮静法

図5

 30%以下の低濃度の笑気を鼻から吸入して、気分を和らげる方法です。吸入して10分程度すると手足が温かく、痺れるような感じがして、恐怖感がとれ、気分がよくなります(多幸感といいます)。 笑気吸入中は意識がなくなることはありません。治療中は笑気を吸入し続けてこの状態を維持します(図5)。治療時間や治療経過は気になりません。笑気には鎮痛効果があり、注射針を歯肉に刺す程度の痛みはほとんど感じません。この方法の特徴は調節性があり、呼吸、循環機能の抑制が少なく、安全性が高いことです。 治療が終わって笑気の吸入をやめると、3分ほどで、血液中に溶けていた笑気は急速に体内から排出され、15分程度で、完全に醒めます。血圧、心拍数に異常がなく、ふらつかず、まっすぐ歩くことができ、問いかけに対する応答も明瞭で、正確であれば、帰宅可能となります。

・静脈内鎮静法

図6

 静脈内に少量の緩和精神安定剤(マイナートランキライザー)や麻酔薬を投与して鎮静を得る方法です(図6)。笑気吸入鎮静法に比べると鎮静度は深く、持続します。30〜90分の処置が適応となります。ベンゾジアゼピン系の緩和精神安定薬ミダゾラム、静脈麻酔薬プロポフォールがよく使用されます。ミダゾラムは初回に鎮静量を投与し、途中、必要に応じて追加します。プロポフオールはミダゾラムと同様な投与法を行う場合とシリンジポンプを用いて持続投与を行う方法があります。通常はこれらの薬剤を単体として用います。鎮静法を行っている間は血圧、心拍数、酸素飽和度をモニターしながら鎮静レベルを把握して薬剤の追加や投与量の調節を行います。終了後は1〜2時間回復室で完全な覚醒を待ちます。呼吸、血圧、心拍数に異常がなく、筋力が回復し、ふらつかず、まっすぐ歩くことができ、問いかけに対する応答も明瞭で、正確であれば、帰宅可能となります。

 当日のアルコール摂取、車の運転、細かい仕事、重要な判断、運動はさけます。可能な限り付き添いを付けて帰宅します。

適応
歯科治療に不安、恐怖心のある方、咽頭反射が強い方、長時間または侵襲の強い処置や基礎疾患を持つ方で治療中の血圧や心拍変動を避けたい場合などに適応となります。

 

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 麻酔・生体管理学分野 海野雅浩

|| 前のページへ || 最初のページへ ||

ページトップへ