広場へ > 雑学いろいろ > 歯と口に関する故事・熟語 >錦心繍口(きんしんしゅうこう)

歯と口に関する故事・熟語

錦心繍口(きんしんしゅうこう)

 唐代の詩人・柳宗元(りゅうそうげん)による『乞巧文(きっこうぶん)』を出典とします。その意味は、詩文の才能に優れている例えで、美しく優れた思いと言葉を操る文筆家への讃辞といったところでしょうか。「錦心(きんしん)」は錦のように美しい思いや心を意味し、「繍口(しゅうこう)」は刺繍のように美しい言葉を指します。しかし作者の柳宗元の生涯は、このイメージとはかけ離れた波乱に満ちたものでした。


 柳宗元は中国の文学者であり政治家で、出身地が河東(現在の山西省)であることから、「河東先生」とも呼ばれています。唐・宋代の8人の著名な文人を指す「唐宋八大家」の1人に数えられました。しかし改革派政治家の柳宗元は、既得権益の剥奪を恐れる保守派の猛反発に遭い、三度に亘る左遷の果てに政治生命を絶たれてしまいます。


 以後、ついに中央復帰の夢はかなわぬまま、47歳で没しました。政治家としては確かに不遇でしたが、その詩作のほとんどが左遷以後に残されています。その作風は、政治上の挫折がかえって逆境を生き抜いた文学者として大成を促したのではないかと、しばしば指摘されるところです。


 「繍口」。それは美辞麗句をならべて人心を惑わす「舌先三寸」の方達の甘言とは違うということなのでしょう。

日本歯科医師会 広報委員会

ページトップへ