11月公開予定 発行:日本歯科医師会 協力:サンスター
2022年7月9日(土)、世界口腔保健学術大会記念第27回口腔保健シンポジウムが、会場・オンライン配信のハイブリッド形式で十分な感染対策をとりながら開催されました。このシンポジウムは、1994年に東京で開催された「世界口腔保健学術大会」を記念し、口腔の健康に関する正しい情報を広めるために、日本歯科医師会が毎年開催しているものです。
このページでは、同シンポジウムのエッセンスをお届けします。
第27回口腔保健シンポジウム パネリスト
人生100年時代。日本人は世界トップの長寿国ですが、実は平均寿命と健康寿命には10年の差があります。人生の最期まで元気で活動できるPPK(ピンピンコロリ)が理想でも、実際は最期の10年間を要支援・要介護状態で過ごすNNK(ねんねんコロリ)になっています。
要介護状態の前兆には筋力や心身の活力が低下する「フレイル(Frailty:虚弱)」という段階があります。さらにその前に現れるのが「オーラルフレイル」です。
お口には「呼吸する」「話す」「食べる」「飲み込む」「唾液を分泌する」などの機能があり、私たちの生活に重要な働きをしています。お口周辺の筋力が低下し、口腔機能が衰えることを「オーラルフレイル」といいます。「むせる」「滑舌が悪くなる」「食べこぼす」といった、ごくささいなお口のトラブルが続く場合は、オーラルフレイルがはじまっているかもしれません。
オーラルフレイルは、身体のフレイルの前に現れることが多く、放置すればやがてフレイルに進み、要介護状態となるリスクがあります。逆に言えば、オーラルフレイルの段階で適切な対策をとれば要介護状態を予防することができます。人生100年時代の今、PPKをめざすには、オーラルフレイルの対策をとることが大切なのです。
オーラルフレイルは、「歯を失う」→「噛めない」→「やわらかいものばかり食べるようになる」→「噛む機能が低下」の悪循環によって起こります。本来、歯は上下で32本(親知らずを除く28本)ですが、何でも噛むことができるためには20本以上保つことが必要です。奥歯でしっかり噛めないと、あごを動かすのに必要な筋力が低下します。また、筋肉のかたまりである舌の力も衰え、食べものを飲み込み、のどに正しく送りこむことができなくなります。その結果、食事が十分にとれないことによる栄養不足や、誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)が起こりやすくなります。
肺炎は日本人の死因第3位の深刻な病気ですが、年齢が高くなるほど誤嚥性肺炎の割合が増え、80代以上の肺炎はほとんどが誤嚥性肺炎です。
80歳で20本の歯を保とう!8020運動の成果
日本歯科医師会では1989年より厚生省(当時)とともに、「8020運動」を推進し、80歳になっても20本以上、自分の歯を保つことを呼びかけてきました。開始当初に「8020」を達している人は7%程度でしたが、長年にわたる継続により、平成28年には51.2%と半数を超える※1までになりました。
※1 厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」